個人の青色申告者にはいろいろなメリットがありますが、そのひとつに所得金額から最高65万円(または10万円)を控除して税金を少なくすることができる「青色申告特別控除」があります。
青色申告特別控除については、国税庁のタックスアンサーにも要件が書いてありますが(No.2072 青色申告特別控除)ここではそれについてわかりやすく説明しています。ぜひ参考にしてください。
※令和2年度分(2020年1月1日~12月31年)からは65万円青色申告特別控除が改正になりますのでご注意ください。
参考:個人事業主の確定申告ガイド|フロー図を用いてわかりやすく解説
もくじ
1. 65万円の青色申告特別控除
2. 控除が使えるのは事業所得と不動産所得
3. 控除を受けるには「複式簿記」による記帳が必要
4. 控除を受けるには貸借対照表と損益計算書の添付が必要
5. 控除を受けるには「発生主義」で記帳すること
6. 10万円の青色申告特別控除
7. 青色申告特別控除を受けるためには期限内に届出が必要
8. 個人の青色確定申告の流れ
0.【令和2年】青色申告特別控除の改正ポイント
令和2年分の確定申告から、以下のように青色申告特別控除が改正されます。
- 65万円・55万円・10万円と3種類に
- 最大65万円控除をうけたい場合は「e-Taxによる電子申告」「電子帳簿保存」のどちらかをしていることが新要件
新要件1:e-Taxによる電子申告
e-Tax(イータックス)とは、国税電子申告・納税システムのことです。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」でデータを作成し、e-Taxで提出(送信)することができます。
ただし、以下のどちらかの準備が必要です。
・マイナンバーカードとICカードリーダライタを利用してe-Taxを行う方法
・「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されたe-Tax用のID・パスワードを利用してe-Taxを行う方法
自分でe-Taxをしたい場合、詳しくは国税庁HP「スマホ × 確定申告 スマート申告始まります!」をご覧ください。
また、電子申告を行っている税理士に申告を頼んでも大丈夫です。
新要件2:電子帳簿保存
電子帳簿保存法とは、請求書や領収書などの国税書類を、電子データによる保存を認めた法律です。
この制度を利用したい場合は、電子帳簿保存をしたい日より3カ月前までに「国税関係帳簿の電磁的記録等による保存等の承認申請書」の提出が国税庁に対して必要です。
詳しくは「スマホ解禁!電子帳簿保存法の完全攻略ガイド」をご覧ください。
1. 65万円の青色申告特別控除
65万円の青色申告特別控除は、個人の確定申告時に受けられる特典です。
青色申告には個人と会社(法人)がありますが、法人にはこの特典はありません。
確定申告とは、簡単にいうと、一年間( 1/1 ~ 12/31 )の収入を税務署に報告して「所得」と「税金」を確定させることをいいます。
65万円控除は、一年間の収入から65万円を引くことで、税金(所得税・住民税・健康保険料)を少なくする効果があります。
2. 控除が使えるのは事業所得と不動産所得
65万円の青色申告特別控除が使えるのは、事業所得と不動産所得になります。
所得には区分が10種類あり、例えばサラリーマンが会社からもらう「給与所得」や、副業で得た「雑所得」にはこの控除は使えません。
青色申告で使える事業所得と不動産所得
- 事業所得
名前の通り、事業から得た所得のことを言います。
単発ではなく、継続して事業を行っている場合に事業所得として認められます。
お住まいを管轄する税務署に「個人事業の開業届出」を提出している必要があります。 - 不動産所得
アパートやマンションの家賃収入や、駐車場などによる所得を言います。
ただ「一定以上の事業的規模がある」場合でないと、65万円控除を受けることができません。
具体的には、貸家なら5棟以上、貸室なら10室以上、駐車場なら50台以上が目安です。
3. 控除を受けるには「複式簿記」による記帳が必要
簿記には「単式」と「複式」がありますが、65万円の青色申告特別控をうけたい場合は複式簿記で記帳する必要があります。
記帳の仕方
- 単式簿記の記帳の仕方… 4/13 (支出)水道光熱費 10,000
- 複式簿記の記帳の仕方… 4/13 (借方)水道光熱費 10,000 (貸方)普通預金 10,000
最近では、あまり簿記の知識がなくても複式簿記が出来る会計ソフトがありますので、それらを利用するのも良いでしょう。
簿記の知識があれば、エクセルなどでまとめてもかまいませんが、確定申告に必要な「貸借対照表」「損益計算書」(このあと説明)の作成を考えれば、何らかのソフトを利用した方が良いと思います。
4. 控除を受けるには貸借対照表と損益計算書の添付が必要
65万円の青色申告特別控除を受けるには、上記の記帳をもとにして作成した「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)と「損益計算書(そんえきけいさんしょ)の添付が必要になります。
貸借対照表と損益計算書
- 貸借対照表
事業で保有している財産や借金を表したものです。
資産(事業の財産)、負債(事業の借金)、資本(開業資金とこれまでの利益の総計)で構成されています。 - 損益計算書
一年間の事業における利益がどれくらいあったかを示す成績表です。
おおまかには、売上、仕入、経費、利益で構成されています。
市販の会計ソフトを利用すれば、日々の記帳をしているだけで、簡単に貸借対照表と損益計算書を作成することができます。
青色申告の確定申告書類の作成までフォローしている会計ソフトもたくさんありますので利用してみてください。
5. 控除を受けるには「発生主義」で記帳すること
65万円の青色申告特別控除を受けるには、売上や経費の計上を「発生主義」で行います。
売上や経費を記帳するタイミングには「発生主義」と「現金主義」という考え方があります。
発生主義と現金主義
- 発生主義
売上や経費が発生したタイミングで計上すること。
売上なら取引が成立した日、経費なら請求書を受け取った日など。個人事業主の事業年度は1月1日から12月31日ですから、例えば12月中に売上が上がって、実際に入金になるのが1月の場合でも、12月に売上は計上します。
このように、発生主義では実際の現金との動きに差が生じます。 - 現金主義
売上や経費を実際の入金・支払いのタイミングで計上すること。
売上なら実際に取引先から入金された日、経費なら実際に支払った日など。
たとえばクレジットカード払いを例にすると、商品を購入してレシートを受け取った日付で記帳するのが発生主義、引き落としがある1ヶ月後に記帳するのが現金主義です。
発生主義については、詳しくは「ド素人でも発生主義の帳簿づけがわかる5つのポイント」をご覧ください。
6. 10万円の青色申告特別控除
上記の2から5までの条件に該当しない青色申告者は、65万円ではなく10万円の控除になります。
7. 青色申告特別控除を受けるためには期限内に届出が必要
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、期限内にお住まいを管轄する税務署に「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
提出期限は、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までに税務署に提出します。
もし、年度途中に新規開業した人は、開業してから2ケ月以内に提出します。
この期限を過ぎてしまった場合は、青色申告特別控除は受けられません。
8. 個人の青色確定申告の流れ
個人の青色確定申告の事業年度は 1/1 ~ 12/31と決まっています。
この期間に生じた売上や経費などを青色確定申告します。
1月1日に今年度の事業をスタートとすると、まず青色申告の届出を3月15日までに税務署に提出します。
もし、年度途中に新規開業した人は、開業してから2ケ月以内に提出します。
そして、翌年 1 月 に、帳簿を基に「決算書」を作成、2 月 決算書を基に「確定申告書」を作成します。
確定申告書の書き方は自分でネットを調べても良いでしょうし、この時期には税務署や臨時で設けられる確定申告会場でも確定申告の書き方を教えてくれます。
2 月 15 日から3 月 15 日までの間に、税務署にて確定申告書を提出し、納税も3月15日までに行う必要があります。
申告書の提出後に、税務署から納付書の送付や納税通知書等によるお知らせはありませんので、ご注意ください。
【参考】確定申告関連リンク
・個人事業主の確定申告ガイド|フロー図を用いてわかりやすく解説
・副業の確定申告ガイド|20万円超から始める手順やバレないやり方
・フリーランスの確定申告|押さえたい8つのポイント
・【2019年度確定申告】改正|基礎控除38万円と33万円完全攻略
・【2019年度確定申告】生命保険料控除の完全攻略ポイント8つ
・【2019年度確定申告】社会保険料控除の完全攻略ポイント8つ
・【2019年度確定申告】寄付金控除の完全攻略ポイント5つ
・【2019年度確定申告】青色申告特別控除の完全攻略ポイント9つ
・【2019年度確定申告】専従者給与・専従者控除の攻略ポイント
・【2019年度確定申告】65万円青色申告特別控除を受けるためのポイント
・【2019年度確定申告】扶養控除の完全攻略ポイント5つ
・【2019年度確定申告】配偶者控除の完全攻略ポイント5つ
・【2019年度確定申告】配偶者特別控除の完全攻略ポイント6つ
・【2019年度確定申告】医療費控除の完全攻略ポイント8つ
・はじめての確定申告の必要書類まとめ・画像つき
・[確定申告]住宅ローン控除の必要書類の集めかた画像つき
・年末調整と確定申告の違いと両方対象者のための4つのケース
最後に
いかがでしたでしょうか。
65万円の青色申告特別控除は、他の控除(生命保険料控除や医療費控除)よりも税金を大きく減らせる効果があるため、ぜひ利用したいですね。
65万円の青色申告特別控除以外のメリットを知りたい場合は「青色申告と白色申告の違いを個人と法人で押さえるポイント3」をご覧ください。