青色申告、白色申告とは簡単にいうと、個人の所得や会社の売上、経費などが一年間どれくらいあったかを税務署に報告する申告方法のひとつです。
ここでは青色申告と白色申告の違いや申告の流れを、個人事業主と会社とに比較してお話しします。
ぜひ参考にしてください。
もくじ
1. 申告には青色と白色の 2 種類
1-1. 青色申告のメリット・デメリット
1-2. 白色申告のメリット・デメリット
2. 青色申告、白色申告の個人と会社の申告の違い
2-1. 個人の青色申告・白色申告は「確定申告」
2-2. 会社の青色申告・白色申告は「法人税申告」
3. 青色申告、白色申告の流れ
3-1. 個人の青色申告・白色申告の流れ
3-2. 会社の青色申告・白色申告の流れ
1. 申告には青色と白色の 2 種類
税金の申告方法には個人でも会社でも「青色」と「白色」の 2 種類があります。
青色申告は税務署にあらかじめ届出をしておくと、税金面で様々なメリットを受けられ、届出をしない、もしくは期限に間に合わなかったなどの場合は全て白色申告になります。
1-1. 青色申告のメリット・デメリット
・個人の青色申告は、利益から 65 万円を控除できる(下記は令和2年分確定申告より適用)
個人の青色申告の一番のメリットといえば、利益から 65 万円を控除できる(黒字を減らし、納める税金を少なくできる)ことです。
白色申告は控除することができません。
ただし、このメリットを受けるためには、帳簿付けを「複式簿記(ふくしきぼき)」で行うことが条件となります。(複式簿記については後述)
自分で簿記を勉強して帳簿付けをするのは大変ですが、最近では簿記の知識がなくても簡単に複式簿記をできるソフトがありますので、自分で行うことも充分に可能です。
法人(会社)には「65万円控除」はありません。
この65万円控除とは、個人が支払う所得税の控除であり、法人は「法人税」になります。
・個人の青色申告は、家族に支払った給与を経費にすることができる
個人の場合は、原則として生計を一にする家族に給与を支払えません。
しかし、個人の青色申告の場合、家族へ支払う給与を経費にすることができます。
経費にすることができると、家族へ支払った給与分を売上から差し引くことができ、税金を少なくすることができます。
ただし、あらかじめ税務署に「青色事業専従者給与に関する提出書」を提出しておく必要があります。
※生計を一にしない家族へ支払う給与は、専従者給与でなくても大丈夫です。
青色事業専従者給与の要件
- 青色申告者と生計を一にする配偶者か親族
- 年齢が 15 歳以上
- 6 カ月を超える期間(もしくは事業年度の 2 分の 1 以上)もっぱら事業に従事していること
- 届出書に記載されている金額の範囲内で支払われていること(金額が過大すぎると認められません)
・個人の青色申告は赤字を 3 年、法人の青色申告は赤字を9年繰り越せる
赤字を繰り越せるメリットは、 例えば2 期目、 3 期目に黒字となった場合に、 1 期目の黒字と相殺することができることです。
黒字を減らすことができれば、納める税金を少なくすることができます。
個人の場合は3年、法人の場合は9年繰り越せます。
・個人の青色申告は、自宅を仕事場にすると家賃や光熱費の一部が経費になる
個人の青色申告の場合は、自宅を仕事場にしている時、家賃や光熱費などの一部を経費にすることができます。(家事関連費といいます)
例えば、 80 平米のマンションで、一室 20 平米を仕事場として使用している場合、家賃のうち 4 分の 1 を経費として計上することができます。
他にも電気代などの光熱費、ガソリン代なども事業で使ったと証明できる部分は経費として認められます。
白色申告の場合は原則認められていません(※家事関連費と分けて事業で使っている割合が50%以上の場合は白色申告でも経費として認められます)
法人の場合は、法人所有の場合(例えば会社名義の車やマンションなど)が経費として認められます。
・ 個人も法人も、30 万円未満のモノを買った時に一括で経費にできる
通常、 10 万円以上のモノを買った場合は、その耐用年数に応じて分割して経費にしなくてはいけない決まりがあります。これを減価償却(げんかしょうきゃく)といいます。
例えば、普通車という「資産」を購入した場合、通常何年も使用するものですから、購入したその年に全額を経費にするのではなく、国によって決められた年数(耐用年数といいます)に分割して経費にする、という決まりがあります。
新車の普通車を購入した場合は 6 年が耐用年数ですので、例えば 120 万円の車の場合は、定額法だと 20 万円ずつ経費として毎年計上することになります。
白色申告の場合は 10 万円未満までしか一括で経費として認められないので、 10 万円以上の資産(パソコンや機械など)は減価償却資産として経理処理します。
このメリットを受けるためには、申告の際に「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書(別表十六)」を提出する必要があります。
・ デメリットは、複式簿記を使って記帳し、損益計算書・貸借対照表を申告書に添付しないといけないこと
青色申告のデメリットは、白色申告に比べて経理処理が大変なことがあげられます。
簿記には「単式」と「複式」がありますが、青色申告のメリットをうけたい場合は複式簿記で記帳する必要があります。
・単式簿記の記帳の仕方… 4/13 (支出)電気代 10,000
・複式簿記の記帳の仕方… 4/13 (借方)電気代 10,000 (貸方)普通預金 10,000
そして、売上や経費がいくらあったかを報告する「損益計算書(そんえきけいさんしょ)」と、会社の資産や借金などを表す「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」の提出も必要です。
ただ、個人の申告(確定申告)の場合は、青色申告までフォローしているソフトを使用すれば、簿記の知識なく記帳もできますし、申告書類も簡単に作成できるものもあります。
デメリットを気にして青色申告の届出をしないよりは、メリットのほうが大きいのでぜひ青色申告をすることをオススメします。
1-2. 白色申告のメリット・デメリット
今までは、白色申告のほうが経理処理が簡単と言われ、白色申告のメリットでしたが、平成 26 年 1 月からすべての白色申告者に「帳簿への記帳」と「帳簿等の保存(期間 5 ~ 7 年)」が義務づけられ、それほど簡易ではなくなりました。
青色申告のメリットをうけるほどの売上がない場合は、白色申告のままでもいいでしょう。
2. 青色申告、白色申告の「個人」と「会社」の申告の違い
個人の青色申告も、会社の青色申告の一番の違いは税務署への申告方法にあります。
個人の申告は、「確定申告(所得税)」
会社の申告は、「法人税申告」
この二つは経理処理の負担や税務の取り扱いが大きく違います。
二つの違いをご説明します。
2-1. 個人の青色申告・白色申告は「確定申告」
個人事業主が税務署に税金の申告をする場合は「確定申告」になります。
確定申告とは、簡単にいうと、一年間( 1/1 ~ 12/31 )の収入を税務署に報告して所得と税金を確定させることをいいます。
個人の確定申告で白色申告より青色申告をした方が良い例
- 会社を設立していない個人事業主
- 副業でたくさん稼いでいるサラリーマン
- 株収入がたくさんある人
- マンションなどの賃貸収入がある人
- 確定申告が不要な場合もあります。ここでは詳細は省略します。
個人の確定申告は、自分で行うことも可能です。
会計ソフトから確定申告の書類を作成することもできますし、確定申告の時期になると、税務署や市区町村でも教えてくれます。
そして青色申告者の場合は、「青色申告会」でも確定申告書の書き方などを教えてくれます。
青色申告会とは、全国の青色申告者に対して、記帳の仕方や適正な申告のやり方などを教えてくれるところです。
会費も数千円と非常にリーズナブルなのが特徴です。
時間に余裕があり、売上や所得がそれほど多くない場合は、自分でやるのもよいと思います。
2-2. 会社の青色申告・白色申告は「法人税申告」
法人が税務署に税金の申告をする場合は、「法人税申告」になります。
法人税申告は、個人の確定申告とはかなり勝手が違います。
決算書作成までは、個人の確定申告の時と同じように会計ソフトを用いて出来上がります。
しかし、問題なのは「法人税の計算」についてです。
個人の確定申告は、会計ソフトから自動的に申告書類が作成されてくるソフトが多数ありましたが、法人税の計算用ソフトはあまりありません。
なぜなら法人税の計算方法は非常に難しく、税法に詳しくない人にも完璧に対応できるソフトの製作はほぼ不可能だからです。
比較的小規模で複雑な経理処理のいらない業種に対応した法人税計算ソフトは以下になりますので参考にしてください。
法人税の計算用ソフト
上記のソフトは、税務の知識があまりなく、比較的規模の小さい法人向けのソフトになっています。
税理士にお願いすると、最低でも 10 万円の決算料がかかりますので、コストパフォーマンスはかなり良いといえます。
また青色申告者は、青色申告会でも青色申告の法人税申告のサポートをしています。
青色申告会では、全国の青色申告者に対して、記帳の仕方や適正な申告のやり方などを教えてくれます。
会費も数千円と非常にリーズナブルです。
ただ法人税ソフトは、税務の知識の無い方向けにわかりやすさ重視で作成されているソフトなので、複雑な申告には対応していません。
また、青色申告会や税務署は、節税のテクニックまでは教えてはくれません。
会計業務が複雑である業種なども、初めから税理士にお願いしたほうが良い場合もあります。
税理士に頼んだほうが良い会社の法人税申告
- 事業所が 2 つ以上ある(ソフトが対応していないため)
- 複雑な取引がある
- 海外仕入れがある
- 税務調査が怖い
- 建設業(経理作業が大変複雑)
- 本業が忙しくて経理業務が全く出来ていないのに取引が多い
- 利益が出過ぎているのに節税対策の方法がわからない
税理士に法人税申告だけお願いすることも可能です。
法人税申告だけお願いしたい場合、費用をできる限り安くするためには、領収書などの資料がきちんと月ごとにエクセルなどでまとめられていたりすると、通常より安くしてもらえることもあります。
3. 白色申告・青色申告の流れ
次に、白色申告・青色申告の一年間の流れを、個人と会社とにわけてご説明します。
一年の流れは、白色申告も、青色申告もそれほど変わりはありません。
青色申告の場合は、期限内に青色申告の届出書を提出するくらいです。
3-1. 個人の白色申告・青色申告の流れ
個人の場合は、必ず事業年度は 1/1 ~ 12/31と決まっています。
1月1日に今年度の事業スタートすると、まず青色申告の届出を3月15日までに
税務署に提出する必要があります。
もし、年度途中に新規開業した人は、開業してから2ケ月以内に提出します。
そして、翌年 1 月 に、帳簿を基に「決算書」を作成、2 月 決算書を基に「確定申告書」を作成します。
確定申告書の書き方は自分でネットを調べても良いでしょうし、この時期には税務署や市区町村役場でも確定申告の書き方を教えてくれます。
2 月 15 日から3 月 15 日までの間に、税務署にて確定申告書を提出し、納税も3月15日までに行う必要があります。
申告書の提出後に、税務署から納付書の送付や納税通知書等によるお知らせはありませんので、ご注意ください。
3-2. 会社の白色申告・青色申告の流れ
会社は事業年度を自由に決められます。今回は4月1日から事業年度を開始した場合を例としています。
4 月 1 日に会社設立した場合は、 6 月 30 日までに「青色申告の承認申請書」を開業してから 3 ヶ月以内に管轄の税務署に提出する必要があります。
3 月には、日々の帳簿を基に決算事務を行い、 4 月に決算書を作成します。
そして、 5月には 決算書を基に「法人税申告書」などの書類を作成するわけですが、必要に応じて消費税申告書や法定調書合計表、給与支払報告書、償却資産税申告書なども提出します。
大変な場合はスポットでも良いので税理士にお願いしましょう。
費用としては最低でも10万円程度かかります。
法人税の申告ソフトが対応している場合には、そちらを利用してもよいでしょう。
そして、5月中に税務署に申告書類を提出し、5月末日までに法人税などの各種税金を納税します。
最後に
白色申告と青色申告の違いを、個人と会社とにわけてご説明しました。
白色申告は、帳簿のつけ方が少し簡単ではあるものの、平成26年1月から「帳簿への記帳」と「帳簿等の保存(期間 5 ~ 7 年)」が義務づけられたことで、青色申告との差がそれほど無くなりました。
ぜひ白色申告よりも、メリットの大きい青色申告を利用して欲しいと思います。