新たに事業を始められる場合にも、すでに個人事業主として事業をスタートしている場合にも、会社を設立するかどうかを自分で判断するのは非常に難しいと思います。
そもそも、会社設立とは、“法人格”を有することをいいます。
法人には、株式会社以外にも、合同会社、合資会社、NPO法人、社団法人、宗教法人、医療法人、税理士法人・・・などなど様々なものがあります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、株式会社を設立するかどうか、どの法人を選ぶかは、業種や事業規模、資金繰り、将来性など様々な面を考慮した上で選択する必要があります。
最適な株式会社設立になるよう、下記に全マニュアルを記述しましたのでお役立てください。
もくじ
1 . 株式会社設立の手続きの流れ全4ステップ
2 . 株式会社設立にかかる費用
3 . 株式会社設立のメリットデメリット全項目
4. 株式会社設立を考えるなら押さえておきたい合同会社設立
5 . その他、株式会社設立で知っておきたい知識
1 . 株式会社設立の手続きの流れ全4ステップ
まずは株式会社の設立手続きの流れを簡単にご説明します。
会社設立の手続きは意外とシンプルで、実際の工程は4ステップしかありません。
その4ステップをきちんと押さえておけば、会社設立を自分で行うことも充分に可能です。
順番にみていきましょう。
1-1 . 公証役場での定款認証
「公証役場」とは、簡単にいうと、文書が正当な手続きによって作成されたことを証明してくれる機関のことです。
公証役場にて文書が正当であるかを見てくれる人を「公証人」と言います。
公証役場はどこに行ってもよい訳ではなく、会社(本店)所在地を管轄する公証役場に行く必要があります。
「定款」とは、株式会社設立時には必ず作成しなくてはいけないもので、株式会社の事業目的や構成員など様々な項目について記載されている文書のことです。
定款について詳しく知りたいかたは、「会社設立の定款作成で必ず押さえておく事項11とその考え方」をご覧ください。
株式会社を設立する第一歩は、公証役場で公証人に自分が作成した定款を認証してもらうところから始まります。
公証役場での定款認証の流れ
- 定款を作成する
- 管轄の公証役場を調べる
- あらかじめ定款の事前審査をしてもらう
- 公証役場に行って定款認証してもらう
公証役場で認証してもらう定款には「紙の定款」と「電子定款」があります。
定款は電子で作成することにより、4万円の印紙代が不要となるため大変お得です。
電子定款とは定款に「電子署名」を付与したものをいい、それを公証役場に行って、正しい手続きで作成したことを公証人に証明してもらうことを「認証」、この一連の流れを「電子定款認証」と言います。
電子定款認証は、必要な手順さえ踏めば誰にでも行うことは可能です。
詳しくは「初めての電子定款作成に必要な知識と機材とその手順」「初めての電子定款認証でも簡単にわかる手続きの流れ5ステップ」をご覧ください。
1-2. 資本金の振込
資本金とは、簡単にいうと株式会社をスタートさせるための準備金です。
株式会社設立後は、このお金が運転資金となったり、設備資金となったります。
株式会社設立時に資本金を出す人のことを「発起人(ほっきにん)」と言います。
発起人は、株式会社を設立する上でどのような会社にするかを考え・決定し、設立の手続きを行います。
株式会社設立時には、必要書類として「資本金の払込証明書」が必要になるため、発起人による資本金の振込作業が必要となります。
振込証明書作成までの手順と注意事項
- 資本金の振込は定款作成日以降
- 通帳に発起人の名前の記載は不要
- 発起人が複数の場合は、1人の口座に集約して入金する
- 通帳のコピーをする
- 払込証明書の作成
振込証明書の詳しい作成手順は「2. 資本金の振込」をご覧ください。
1-3 法務局にて登記申請
法務局とは、土地や家屋や会社の登記をするところをいいます。
簡単に例えると、人は産まれると区役所や市役所に出生届を出しにいきますよね。
それと同じで、会社は法務局で登記をして初めてその存在を認めてもらえることになるのです。
法務局はどこに行ってもよい訳ではなく、会社(本店)所在地を管轄する法務局に行く必要があります。
登記申請の仕方は、基本的には法務局の「商業登記(法人登記、会社登記)」に設立登記申請書など必要書類を提出するだけです。
法務局での登記の方法
- 法務局に直接行って登記をする
- 郵送にて登記をする
- ネットにて登記をする
直接窓口に持っていった場合は、「登記の申請日」が「株式会社の設立日」となります。
郵送の場合の設立日は、申請書類が届いて法務局が受付をした日になります。
法務局での登記申請の詳しい手順や、登記申請申請書等の作成方法は「3-1. 会社登記の方法は3種類(直接、郵送、ネット申請)」をご覧ください。
1-4. 登記申請後、約1週間にて設立完了
登記申請後に、そのまま7日 ~ 10日ほど連絡がない場合や、補正箇所を全て修正したら登記完了です。
株式会社設立の詳しい手順は「初めての会社設立でも自分でできる手続きの流れ全4ステップ」をご覧ください。
2 . 株式会社設立にかかる費用
次に株式会社を設立するのにかかる費用についてです。
株式会社は以前、設立するのに資本金が1000万円以上必要でした。
今は資本金が1円からでも設立出来るようになったとはいえ、設立にはそれなりの費用が必要になります。
設立する前にしっかり用意しましょう。
株式会社の費用項目
【1. 公証役場の定款認証にかかる費用】
・公証役場の定款認証手数料…5万円
・定款の謄本(写し)交付手数料…250円×枚数分
・紙の定款に貼る収入印紙…4万円(電子定款の場合は不要)
・電子定款を作成する機材…約1万円(電子定款を自分で作成しない場合は不要)
【2. 法務局の設立登記にかかる費用】
・法務局にて登記する際の登録免許税…15万円
【3. 印鑑関係】
・会社の実印…7000円~
・会社の印鑑登録…無料
・会社の印鑑カード…無料
・会社の印鑑証明書…450円/1通
・個人の実印…3000円~
・個人の印鑑登録…200~500円
・個人の印鑑証明書…200~400円/1通~
【4. 資本金】
・資本金…1円~
【5. 会社設立を代行業者にお願いした場合の費用】
・代行業者の手数料…数千円~数万円(任意)
資本金は1円からでも設立は可能です。
とにかく安く、株式会社の設立をしたいのであれば1円でも良いでしょう。
ただ、資本金の額は少なすぎても多すぎてもその後の運営にはよくありません。
例えばあまりに低額の資本金だと金融機関の口座が開けなかったり、1000万円を超えると初年度から消費税を納めなければならなかったりと、いろいろ不都合があります。
株式会社設立後の運営を考えるなら、資本金の額は“300~1000万円”くらいがベストではないかと思います。
また、株式会社の設立手続きは、自分で行うことも充分可能です。
しかし、株式会社の設立費用は、代行業者にお願いしても、自分で設立しても、実はそれほどの差はありません。
自分で設立した場合、法務局への提出書類である定款を紙で作成すると、4万円の印紙代がかかります。
自分で電子定款を作成した場合が一番安いですが、それに伴う手間はそれなりに面倒し、機材の購入も必要です。
代行業者へ依頼した場合は、業者によって手数料金額は違うものの、数万円の手数料でスピーディで確実な設立が可能となります。
何度も設立するのであればともかく、たった1度の株式会社設立なのであれば、代行業者を選択肢に入れるのはオススメです。
3. 株式会社設立のメリットデメリット
株式会社を設立するにあたっては、そのメリット・デメリットも押さえておく必要があります。
場合によっては、会社を設立するよりも個人事業主のほうが良いこともありますし、株式会社でない形態のほうが良い場合もあるからです。
そもそも、会社設立とは、“法人格”を有することをいいます。
法人には、株式会社だけでなく、合同会社、合資会社、NPO法人、社団法人、宗教法人、医療法人、税理士法人・・・などなど様々なものがあります。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、会社を設立するかどうか、どの法人を選ぶかは、業種や事業規模、資金繰り、将来性など様々な面を考慮した上で選択する必要があります。
ここでは、株式会社のメリット・デメリットをご紹介しますので参考にしてください。
詳しく読みたい場合は「会社設立を考える時に押さえたいメリットデメリット全項目」をご覧ください。
株式会社設立のメリットを受けられる基準は大きく2つ
個人事業主から株式会社を設立したほうが良いかどうかは、大きく2つのボーダーラインが存在します。
(1) 年間の課税所得(税引後の所得)が400万円以上
(2) 売上が1000万円以上
もし上記2点に該当するようであれば、会社設立することを検討しましょう。
所得が増えてくれば税理士と一度面談して税額を計算してもらうのがいいでしょう。
株式会社のメリット・デメリット
【1. 税金面の優位点は5点】
・税引後の所得が400万円以上なら会社設立を検討
・二つの要件を満たすと消費税が2期免除になる
・赤字が9年繰り越せる
・生命保険が経費にできる
・家族・親族に給与を支払える
【2. 決算日を自由に設定できる】
・消費税の免税期間が最長となるように設定できる
・売上が極端に多い月を期首にすることができる
・繁忙期を避けることができる
・キャッシュが不足する月を避けることができる
【3. 融資・資金調達は会社を設立しても有利になるとは限らない】
金融機関からの融資・資金調達の成功の可能性は、「法人」か「個人」かはあまり関係ありません。
最も大切なのは、代表者となるその人個人のこれまでの経歴、業界経験、事業計画書の内容、そして自己資金の額(いかにコツコツ貯めてきたか)によります。
【4. 経営面でのリスクが少なくなる】
株式会社・合同会社は「有限責任」ですが、個人は「無限責任」です。
有限責任の場合は、会社が倒産した時には、出資額を限度額として責任を負うことになります。
【5. 事業承継が容易、相続税がかからない】
法人の場合は、社長が亡くなっても会社の財産には相続税はかかりません。(但し、経営者が所有していた株式には、相続税がかかります)
【6. 設立費用が必要】
株式会社では20~24万円ほどかかります。
それ以外にも会社印の作成費用、設立後でも役員変更登記などの費用がかかります。
【7. 最低でも7万円の法人住民税が発生】
毎年赤字であっても最低7万円はかかります。
・法人都道府県民税均等割…2万円
・法人市町村民税均等割…5万円
【8. 経理事務負担が増大】
法人の経理事務は、個人と違って「会社法」にそって処理をしなければなりません。
最も大きな負担は「税務申告」です。
株式会社の場合は、法人税・消費税・地方税の申告書をそれぞれ作成しますが、基本的には税理士にお願いすることが多く、その場合の費用は最低でも10万円ほどはします。
【9. 社会保険への加入義務】
法人は、例え取締役1人だけの会社であっても、社会保険・労働保険ともに加入義務があり、コストも発生します。
しかし逆に、個人事業主は厚生年金へ加入出来ませんし、従業員を雇う場合、社会保険は1つのポイントになるでしょうから、そういった面では逆にメリットとも考えられます。
4. 株式会社設立を考えるなら押さえておきたい合同会社設立
合同会社はここ数年、新規設立数が右肩上がりに伸びている人気の設立方法です。
株式会社と比べた時の合同会社のメリット・デメリットを簡単にあげておきます。
合同会社の設立にも興味がある場合は
「合同会社を考えるなら押さえておきたいメリット・デメリット」
「初めての合同会社設立でも簡単な手続きの流れ完全4ステップ」 をご覧ください。
株式会社と比較した合同会社のメリット・デメリット
【1. 信用度は断然株式会社のほうが上】
信用度は断然株式会社のほうが上になり、この場合の信用度とは主に取引先からの信用度です。
融資・資金調達については株式会社か合同会社かの「法人形態」によるのではなく、代表者となるその人「個人」のこれまでの経歴、自己資金の額、事業計画書の内容によります。
【2. 設立費用は合同会社のほうが安い】
設立費用に関しては完全に合同会社に軍配が上がります。
だいたいどこのサイトでも株式会社設立にかかる費用は20~24万円前後、合同会社は6~10万円前後ほど設立費用がかかります。
とにかく安く設立したい!とにかく法人格が欲しい!という場合は合同会社がお得です。
【3. “代表取締役”と入れられるのは株式会社だけ】
名刺を作成する場合に「代表取締役」と入れられるのは株式会社だけです。
合同会社の名刺の肩書きは、『代表社員』『業務執行社員』となります。
【4. 将来的に規模を大きくしたいなら株式会社】
将来的に会社の規模を大きくして、株式公開や株主からの増資を検討したいと考えている方は株式会社のほうがよいでしょう。
ただし規模が小さいからこそ法人成りして信用度をアップさせたい、と考えている場合は株式会社をオススメします。
【5. 節税メリットはどちらも同じに受けられる】
株式会社も合同会社も節税などのメリットは同じように受けられます。
ただし、デメリットも同じように存在します。
【6. 合同会社は上場できない】
上場が出来るのは株式会社だけです。
いずれは上場を目指すという目標がある人は、将来的に会社の規模を大きくして株式公開や株主からの増資を検討したいと考えている方は株式会社のほうがよいでしょう。
5 . その他、株式会社設立で知っておきたい知識
5-1. 株式会社を設立する前に準備しておくこと
下記の項目は設立するために必ず必要な「定款」を作成するためにも考えなくてはいけない事項です。
項目の詳しい内容は「会社設立の定款作成で必ず押さえておく事項11とその考え方」をご参照ください。
株式会社を設立する前に準備しておくこと
- 商号(会社名)を考える
- 事業目的を考える
- 本店所在地を決める
- 資本金の額を考える
- 事業年度(決算月)を考える
- 発起人の人数
- 取締役の人数と任期
- 発行可能株式総数
- 株式の譲渡制限
- 取締役会設置の有無
- 発起人と取締役の印鑑証明書を用意する
- 会社印を用意する
- 準備金を用意する
5-2. 役員報酬を決める
役員報酬の「役員」とは、法人税法で定められている役員にあたります。
具体的には、代表取締役である社長はもちろん、法務局にて登記されている取締役、監査役、実質的に経営に従事していると認められる人や、同族会社の従業員のうち一定の要件をすべて満たす人も役員報酬に該当する場合があります。
役員報酬は、株式会社を設立してから3ケ月以内に金額を決めなくてはいけません。
また、一度決めると、事業年度中は役員報酬の増減が出来ないことになっています。
毎月定額の役員報酬は損金に算入できる(税金を減らすことができる)ため、重要な要素のひとつです。
株式会社の設立を検討するにあたっては、役員報酬のことも念頭に入れて考える必要があります。
役員報酬の決め方
- いくら役員報酬をもらえば生活していけるのか
- 納める税金を最も少ない金額にした場合の役員報酬の設定
- 金融機関からの融資を考えた場合の役員報酬の設定
- 会社の運転資金を残した場合の役員報酬の設定
まずは、納める税金に全く関係なく「いくら役員報酬をもらえばとりあえず生活していけるのか」「どれくらい役員報酬をもらいたいのか」という考え方です。
これは会社を設立したての経営者の考え方です。
事業を始めたばかりで、まだまだ売上見込みも不安定なうちは、まずはいくら役員報酬をもらえばとりあえず生活していけるのか、という考え方で役員報酬を設定しても充分です。
2期目、3期目以降、売上が伸びて節税対策が必要になってきたら、納める税金を最も少ない金額に設定した役員報酬などを考えるといいでしょう。
もっと詳しく役員報酬の決め方を知りたい場合は「役員報酬を決める時に必ず知っておきたい6つのポイント」をご覧ください。
【その他、参考ページ】
・「取締役と執行役員の違いがわかる押さえるべき5つのポイント」
・「青色申告と白色申告の違いを個人と法人で押さえるポイント3」
最後に
いかがでしたでしょうか。
初めて株式会社を設立にするにあたって押さえておきたいことをご説明させていただきました。
株式会社を設立するにあたっては、業種や事業規模、資金繰り、将来性など様々な面を考慮した上で、設立するのかしないのか、株式会社にするのか合同会社にするのかなど選択する必要があります。
私のオススメは、ぜひ専門家の無料相談を利用して欲しいということです。
無料相談ですから、有益な情報だけ引き出して、あとは自分で手続きするのもひとつの手でしょう。