初めての電子定款作成に必要な知識と機材とその手順

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電子定款

あなたは今、会社設立にあたり、定款を“紙”で作ろうか、“電子定款”にしようか悩まれていることと思います。

会社設立の際に必要な「定款」は、電子で作成することにより4万円の印紙代が不要となるため、作成を考える方が多くなりました。

しかし、電子定款は皆さんにとってなじみのないものですので、そもそも電子定款とはどういうものなのか、自分で作成できるのかなど疑問に思われていることと思います。

電子定款は、必要な機器さえそろっていれば、誰にでも作成可能です。
ここでは、電子定款を作成するにあたって最低限必要な知識と、その作成手順をご説明します。
会社設立の際には、ぜひお役立てください。

もくじ

0. そもそも電子定款は自分で作成したほうがいいとは限らない
1. 電子定款とはPDFファイルに「電子署名」を付与すること
2. 電子定款は「自分で作成」と「専門家へ依頼」の2種類
3. 自分で電子定款をつくる際に必要な機器とその費用
4. 自分で電子定款を作る手順
4-1. Wordなどで定款を作成
4-2. 公証役場で定款をあらかじめチェックしてもらう
4-3. ICカードリーダライタ・Adobe Acrobat・電子証明書つき住基カードを取得
4-4. 公的個人認証サービスポータルサイトで「利用者クライアントソフト」をインストール
4-5. 「PDF署名プラグインソフト」をインストール
4-6. Adobe Acrobatで、定款をPDFファイルに変換
4-7. ICカードリーダライタを使って、電子署名プラグインで署名
4-8. 電子定款が完成したら、電子認証手続き

 

0. そもそも電子定款は自分で作成したほうがいいとは限らない

電子定款は、必要な機材やソフトがあれば、誰にでも作成は可能です。

しかし、あとにもご説明しますが、電子定款の作成の手順はそれなりに面倒ですし、専用機材の購入も必要です。
会社設立の専門家にお願いしても、実は費用にそれほどの違いはなく、電子定款の作成だけでなく会社設立のかなりの部分の手続きを代行してもらえるので、時間的には最小限で済みます。

これから、電子定款の作成の手順に加え、専門家に頼んだ場合のメリット・デメリットも記載しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

1.  電子定款とはPDFファイルに「電子署名」を付与すること

電子定款とは、簡単にいうとPDFファイルにした定款に、「電子署名」を付与したもののことを言います。

電子署名とは、電子文書(PDFファイルなど)に付与する、電子的な証であり、紙文書における印やサインにあたります。

電子署名のやり方は後で詳しく説明しますが、簡単に言うと、市区町村で発行する「電子証明書つき住基カード」の情報を、必要なソフトと機材を使って、PDFファイルにした定款に付与します。

電子署名イメージ

 

2. 電子定款は「自分で作成」と「専門家へ依頼」の2種類

電子定款を作成するには、自分でソフトや機材をそろえて作成する方法と、専門家に依頼する2種類があります。
実は、自分で定款を作成しても、専門家に頼んでも、費用にそれほどの違いはありません。

【自分で定款を作成した場合と、専門家に頼んだ場合の費用比較】

設立費用比較
特に、電子定款の作成を自分で行う場合には、作成作業の手間がかなり面倒なうえ、必要機材の購入などがあるため、あまりオススメはしません。

以下に自分で電子定款を作成する場合の手順を記述します。

【自分で電子定款を作成する手順】(詳しい内容は後に記述します)

電子定款作成の流れ
上記をみてもわかる通り、電子定款を作成するのは手間も費用もかかります。
紙の定款を作成する場合は、定款認証印紙代として4万円かかりますが、1→2→9の手順で済みます。

自分で電子定款をつくる際に必要な機器とその費用については、このあと記述します。

【電子定款の作成を専門家に頼む場合】

電子定款の作成代行の窓口となるのは「税理士」「司法書士」「行政書士」「ネット激安業者」があげられます。それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。
士業比較

【税理士】→会社設立後のことも考えるなら、まずは税理士に無料相談

税理士は直接的には電子定款の作成はしません。
提携している司法書士にお願いする場合がほとんどです。
電子定款の作成だけをお願いしたい場合には不向きです。
しかし、税理士のメリットは、なんと言っても設立時に税金面や経営の相談が出来ることです。
設立後は必ず決算がやってきて、税務署に決算申告をしなくてはいけません。
また、金融機関からの融資を検討する場合にも、会社の成績表である損益計算書や貸借対照表の提出が求められます。
設立時に税理士がいない場合には、一度、税理士による無料相談にて助言を聞いてみることをオススメします。

【司法書士】→電子定款作成から法務局の設立登記申請までお願いしたいなら司法書士

司法書士に手続きをお願いすると、電子定款の作成のみならず、公証役場や、会社設立登記に必要な法務局へも行ってくれる場合が多いので、自分でやることは最小限で済みます。
会社設立を効率的に最短で行いたい場合は、司法書士にお願いするのが確実でしょう。
デメリットとしては、他業者よりも手数料が高額なことが多いです。

【行政書士】→電子定款作成・定款認証をお願いしたいなら行政書士

行政書士にお願いした場合のメリットは、司法書士よりも手数料が安いことがあげられます。
電子定款の作成のみをお願いしたい場合は、行政書士がよいでしょう。
ただし、行政書士は定款を作成することはできますが、会社設立登記に必要な法務局に提出する書類を作成することはできません。

【ネット激安業者】→とにかく安い費用で会社設立をしたいならネット業者

ネット激安業者は、行政書士や司法書士と提携している場合が大半です。
メリットは、なんといっても手数料の安さです。
数千円の手数料で電子定款のみならず、簡単に会社設立までできることが多いです。
とにかく会社を安く作りたい場合にはオススメです。
デメリットとしては、書類の作成はできますが、公証役場や法務局にまではいってはくれないところが大半です。

 

3. 自分で電子定款をつくる際に必要な機器とその費用

ここでは、電子定款をつくる際に必要な機器とその費用についてご説明します。

電子定款の作成に必要なソフトと機材

  • ICカードリーダライタ…1000円~5000円
  • Adobe Acrobat…1580円(月額)~
  • 住基カード…500円
  • 電子証明書…500円

・ICカードリーダライタ(値段:1000~5000円程度)

住基カードとリーダ
市区町村で発行する「電子証明書つき住基カード」にはICチップが内臓されています。
そのICチップの電子証明書のデータを読み込み、PDFファイルの定款に付与するために「ICカードリーダライタ」が必要になります。
ICカードリーダライタには種類があり、何を買ってもよい訳ではなく「公的個人認証サービス対応」のものが必要です。
さらに、市区町村によって、対応するICカードリーダライタが違うため、「公的個人認証サービスポータルサイト」に、対応するICカードリーダライタの一覧があるので参照してください。
公的個人認証サービスポータルサイト「ICカードリーダライタの選定」

・Adobe Acrobat (値段:1580円~(月額)

Wordで作成した定款を、PDFファイルに変換して、電子署名をする必要がります。
電子署名とは、市区町村で発行する「電子証明書つき住基カード」の電子証明書のデータをPDFファイルの定款に付与することを言います。
Adobe Acrobatは以下のものを購入してパソコンにインストールします。

2015年3月現在の動作推奨Adobe Acrobat

  • Adobe Acrobat 10 Professional
  • Adobe Acrobat 10 Standard
  • Adobe Acrobat 11 Professional
  • Adobe Acrobat 11 Standard
  • 無料のAdobe Readerでは、定款の電子署名はできません。

・住基カード(値段:500円)

住基カード(住民基本台帳カード)は住民票のある市区町村役場で発行してもらいます。
代表者の住基カードを発行してもらいましょう。
(紙の定款の場合は、発起人が数名いた場合、全員の署名・押印が必要ですが、電子署名の場合は、代表者ひとりで大丈夫です)
この時、「電子証明書」が必要であることを伝えると、「電子証明書つき住基カード」が発行されます。

住基カード発行の必要書類(市区町村によって違います)

  • 本人確認書類(免許証・健康保険証など)…本人確認は厳しくなっているので、必ず市区町村サイトで確認してください
  • 顔写真(6カ月以内に撮影した縦4.5cm横3.5cm)…市区町村によっては、当日に無料で撮影もできるようです。顔写真なしのカードの場合は写真は不要
  • 印鑑(シャチハタ不可)
  • 手数…1000円(住基カードのみの場合は500円)

・電子証明書(値段:500円)

電子証明書は市区町村役場で発行してもらった「住基カード」に付与してもらいます。
すでに、住基カードを持っている方は、そのカードに電子証明書を付与してもらいます。
電子証明書は住基カードのICチップに内蔵されます。

電子証明書発行の必要書類(市区町村によって違います)

  • 本人確認書類(免許証・健康保険証など。)
  • 住基カード
  • 手数…500円
 

4. 自分で電子定款を作る手順

ここからは、いよいよ自分で電子定款を作成する手順についてご説明いたします。
ひとつずつ詳しくご説明するのでお役立てください。

 

4-1. Wordなどで定款を作成

まずは、Wordなどで定款を作成します。
「定款」とは、会社設立時には必ず作成しなくてはいけないもので、会社の事業目的や構成員など様々な項目について記載されている文書のことです。
会社設立の定款作成で決める事項11と、その注意点」に定款の作成方法について詳しく記載していますのでご参照ください。

 

4-2. 公証役場で定款をあらかじめチェックしてもらう

次に、作成した定款に電子署名をする前に、あらかじめ公証役場にて内容のチェックをしてもらいます。

「公証役場」とは、簡単にいうと、文書が正当な手続きによって作成されたことを証明してくれる機関のことです。
公証役場にて文書が正当であるかを見てくれる人を「公証人」と言います。

定款を作成すると、公証役場で定款の認証をしてもらう必要がありますが、定款を認証してもらう公証役場はどこでも良いわけではなく、会社の本店所在地と同じ都府県内の公証役場でなければなりません。(北海道は例外)

公証役場の公証人によっては、事前チェックの方法がファックスやメール、PDFなど対応が違う場合がありますので、電話で確認してください。

 

4-3. ICカードリーダライタ・Adobe Acrobat・電子証明書つき住基カードを取得

次に、ICカードリーダライタと、Adobe Acrobatのソフト、電子証明書つき住基カードを取得します。
詳しい内容は、前述「3.自分で電子定款をつくる際に必要な機器とその費用」をご覧ください。

 

4-4. 公的個人認証サービスポータルサイトで「利用者クライアントソフト」をインストール

取得した住基カードの電子証明書を利用するには、公的個人認証サービスポータルサイトで「利用者クライアントソフト」をインストールする必要があります。

公的個人認証サービスとは、個人や企業、自治体、国とがつながり、電子申請や届出を行う仕組みで、他人によるなりすまし申請や電子データが改ざんされていないことを確認するための機能を持っています。

この公的個人認証サービスが提供している「利用者クライアントソフト」をダウンロードすることにより、住基カードの電子証明書を使えるようになります。
このソフトは無料でダウンロードできますので、インストールしてください。
公的個人認証サービスポータルサイト「利用者クライアントソフト」

 

4-5. 「PDF署名プラグインソフト」をインストール

次に、電子署名をするために「PDF署名プラグインソフト」をインストールします。
Adobe Acrobatを購入しただけでは、PDFファイルに電子署名はできません。
PDF署名プラグインソフトをインストールして初めて電子署名が出来るようになります。
PDF署名プラグインソフトは法務局の登記・供託オンライン申請システムのサイトから無料でダウンロードできます。
登記・供託オンライン申請システム「PDF署名プラグインソフト」

 

4-6. Adobe Acrobatで、定款をPDFファイルに変換

次に、Adobe Acrobatで定款をPDFファイルに変換します。
購入したAdobe Acrobatをパソコンにインストールし、Wordで作成した定款を開いてPDFで保存します。
そのときのファイル名は漢字・ひらがな・半角英数字のいずれでも構いませんが、半角で31文字以内、漢字ひらがなであれば15字以内でないと電子公証の場合システム上処理できません。
ハイフォンやドットなどの記号も使えますが、使える記号の使用には制限がありますのでできるだけ漢字・ひらがな・ 英数字でファイル名をつけるようにしてください。

 

4-7. 電子署名プラグインで署名

ICカードリーダライタで読み取った電子証明書を「電子署名プラグインソフト」を使ってPDFの定款に埋め込みます。
電子署名の操作の仕方は、公的個人認証ポータルサイトで説明しているやり方とは違いますので、必ず法務局の登記・供託オンライン申請システムのサイトの「PDF署名プラグインの操作説明書」をご覧ください。
この説明書には、Adobe Acrobatのバージョンごとの電子署名のやり方が画像つきで説明されていますので、そちらを参照ください。
電子署名のロゴ(印影)は、何も設定しなければAdobe Acrobat であらかじめ用意した「印」が指定した箇所に表示されます。(変更することも可能)

電子署名の印影

 

4-8. 電子定款が完成したら、電子認証手続き

電子定款が完成したら、定款の電子認証をします。
電子定款認証の簡単な流れは

1. 登記・供託オンライン申請システムにて申請者情報の登録
2. 申請用総合ソフトのインストール
3. 申請用総合ソフトから電子定款を送信
4. 公証役場で定款を受け取る
5. 法務局で設立登記

詳しくは「初めての電子定款認証でも簡単にわかる手続きの流れ5ステップ」をご覧ください。

最後に

定款の電子認証は、電子定款の送信まではネット上で行いますが、認証を受ける際には公証役場へ定款を取りに行かなければいけません。
ネット上ですべてが完了するわけではないのでご注意ください。

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