「定款」とは、会社設立時には必ず作成しなくてはいけないもので、会社の事業目的や構成員など様々な項目について記載されている文書のことです。
会社設立後の運営をスムーズに進めるためには“本当にあなたにとって適切な事項が記載されている定款”の作成は不可欠です。
ここでは、初めてでも穴埋めでできる株式会社の定款作成の手順について記載しています。
ぜひ参考にしてください。
もくじ
1. 紙作成の定款
1-1. 表紙(商号・定款作成日)
1-2. 定款の2枚目(商号・事業目的・本店所在地・公告の方法・株に関すること)
1-3. 定款の3枚目
1-4. 定款の4枚目(取締役の員数、取締役の任期)
1-5. 定款の5枚目(事業年度、発行株式数、1株の価格、資本金、氏名・住所)
1-6. 定款の6枚目(発起人)
1-7. 定款の製本の仕方
2. 電子定款の作成
2-1. 電子定款表紙~5枚目(紙の定款と同じ)
2-2. 電子定款の6枚目(電子署名)
1. 紙作成の定款
ここでお話する定款は、多くの中小企業が該当する「取締役会の設置なし」「株式の譲渡制限あり」の定款になります。
取締役会設置の定款のひな形は「法務省:商業・法人登記申請 株式会社設立登記申請書(取締役会設置会社の発起設立)を参照ください。
1-1. 表紙(商号・定款作成日)
表紙には、会社の商号(会社名)と、定款の作成日を記入します。
商号は、(株)と略さずに、株式会社と記入します。
商号(会社名)を付けるときにはいくつかの注意点がありますので、詳しくは「1-1. 商号(会社名)を考える時の注意点」をご覧ください
公証人の認証日と会社の設立日は作成時には空欄にします。
1-2. 定款の2枚目(商号・事業目的・本店所在地・公告の方法・株に関すること)
2枚目には、会社の商号(会社名)、事業目的、本店所在地、公告の方法、発行可能株式総数を記載します。
事業目的とは、「あなたの会社は何をしている会社なのか」ということを記載しています。
事業目的には、実際に行う予定のある事業を記載する必要があります。事業目的の記載の仕方は、ある程度決まりがありますご注意ください。(詳しくは1-2. 事業目的を考える際の注意点をご覧ください)
本店所在地とは、簡単に言うと本社の住所のことをいいます。
本店所在地を決めるときの注意点は「1-3. 本店所在地」をご覧ください。
公告とは、会社から株主など利害関係者に対する「お知らせ」のことです。
公告方法は、「官報(国が発行する新聞のようなもの)」によって行うか「電子公告(公告文書をPDFファイルにして自社のホームページ等に掲載)」によって行いますが、一般的には「官報へ掲載する方法により行う。」と記載するのが一般的です。
発行可能株式総数というのは、株式会社が発行可能な株式総数のことです。
「株式の譲渡制限」を設ける場合には、発行可能株式総数に決まりはありません。
中小企業の場合は、株式の譲渡制限を設ける場合が多いです。
詳しくは「1-9. 発行可能株式総数」をご覧ください。
1-3. 定款の3枚目
定款の3枚目は記載の内容をそのまま流用してもかまいません。
記載されている内容は「株式」に関することと、「株主総会」に関することです。
1-4. 定款の4枚目(取締役の員数、取締役の任期)
定款の4枚目には、取締役の員数と、取締役の任期を記載します。
取締役とは、会社の経営を株主から委任された人で、会社の登記簿にも取締役として登記されることになります。
取締役は一人でも株式会社の設立はできます。
中小企業の場合は、取締役一人からスタートの場合が多いです。
取締役の任期は、通常2年ですが、株式の譲渡制限がある場合の任期は最長10年です。
中小企業の場合は、株式の譲渡制限を設ける場合が多いです。
詳しくは「1-8. 取締役の人数と任期」をご覧ください。
1-5. 定款の5枚目(事業年度、発行株式数、1株の価格、資本金、氏名・住所)
定款の5枚目には、事業年度、1株の価格、発行株式数、設立時の資本金、取締役の氏名・住所を記載します。
事業年度とは、会社の成績表である“決算書”を作成するために区切った期間をいいます。
半年を1事業年度としてもよいのですが、決算作業や申告はかなり大変な作業なので、通常は1年間を事業年度としているところが大半です。
詳しくは「1-6. 事業年度(決算月)を考える際の注意点」をご覧ください。
1株の価格は、いくらに決めてもかまいませんが、一般的には1万円か5万円が多いです。
発行株式数は、1株の価格を決めたあと、資本金の額で割ったものです。
例えば、1株が1万円、資本金300万円であれば、発行株式数は300株になります。
資本金とは、簡単にいうと会社をスタートさせるための準備金です。会社設立後はこのお金が運転資金となったり、設備資金となったります。
資本金は1円からでも設立は可能です。ただ、資本金の額は少なすぎても多すぎてもよくありません。
詳しくは「1-5. 資本金の額を考える際の注意点」をご覧ください。
設立時の取締役の住所と氏名を記載します。
1-6. 定款の6枚目(発起人)
定款の6枚目は、発起人についての記載と、署名押印をします。
発起人とは、株式会社を設立する上でどのような会社にするかを考え・決定し、会社設立の手続きを行う人のことをいいます。
発起人は、設立する会社の株式を必ず1株以上引き受けるというルールがありますので、必然的に会社の株主となります。
発起人は「取締役」の選任権をもっていますが、「取締役」になる必要はありません。
詳しくは「1-7. 発起人(ほっきにん)の人数」をご覧ください。
1-7. 定款の製本の仕方
紙の定款は、最後に製本をして、各ページのつづり部分に、発起人全員の「契印」をします。
製本は、表紙を上にして、左側に二か所ホチキス止めをします。
そして、各ページの見開いた境目のところに「契印」をします。
契印とは、文書が二枚以上になる場合に、文書の一部が抜け落ちていたり、差換えたりするのを防ぐ効果があります。
発起人全員の印鑑証明書と同じ印鑑で押印します。
2. 電子定款の作成
電子定款も、定款の主な記載内容は、紙の定款と同じです。
ここでは紙の定款と比べて違う点をお話します。
2-1. 電子定款表紙~5枚目(紙の定款と同じ)
電子定款の表紙から5枚目までは、紙の定款と記載内容は同じです。
ただ、電子定款の場合は、定款に契印は必要ありません。
2-2. 電子定款の6枚目(電子署名)
電子定款とは、簡単にいうとPDFファイルにした定款に、「電子署名」を付与したもののことを言います。
電子定款の文章作成はWordなどのソフトで作りますが、そのあとPDFファイルにして保存し、電子署名をします。
電子署名とは、電子文書(PDFファイルなど)に付与する、電子的な証であり、紙文書における印やサインにあたります。
紙の定款の場合は、発起人全員の署名と押印(印鑑証明書印)が必要ですが、電子定款の場合は代表者1名で大丈夫です。
電子定款の作成には、専用機材が必要になります。
詳しい電子定款の作成方法は「初めての電子定款作成に必要な知識と機材とその手順」をご覧ください。
電子定款を作成した後の詳しい手順については「初めての電子定款認証でも簡単にわかる手続きの流れ5ステップ」をご覧ください。
最後に
いかがでしたでしょうか。
定款の作成は、ひな形を用いれば、初めてでも作成は十分に可能です。
しかし、定款の内容を変更するには、法務局や税務署などに届出が必要であったり、数万円の登記費用が必要であったりします。
内容を充分に考え、専門家に相談することも視野にいれて作成しましょう。