あなたは今、起業融資についてお調べのことだと思います。
起業融資とは、その名のとおり、起業時に金融機関などからお金を借りて、運転資金や設備投資などにあてることを言います。
起業融資は、個人の住宅ローンや、事業が始まって何年かたってからの融資とは違い、起業時ならではの要件があるのが特徴です。
良いスタートを切りたい起業家にとって、これから事業を軌道に乗せるにあたり、起業融資をうまく活用することは大切な要素となります。
ここでは、起業融資について、わかりやすくお話ししています。
ぜひ参考にしてください。
もくじ
0.いいスタートを切りたい起業家にとっての起業融資の重要性
1.起業融資で金融機関が見るポイント5つ
1-1.自己資金
1-1-1.「自己資金なし」の融資が非常に難しい理由
1-1-2.コツコツ貯める自己資金の持つ意味
1-2. 数値が現実的で、実効性の高い「事業計画書」
1-3. 起業する人の“人となり”
1-4. 自分のステージにあった金融機関選び
1-5. 過去に事故歴(カード払いや公共料金の未納)がないか
2.起業融資の借りる先2つ
2-1.日本政策金融公庫
2-2.信用金庫・信用組合
0.いいスタートを切りたい起業家にとっての起業融資の重要性
事業を始めるにあたっていいスタートを切りたい起業家にとって、起業融資はとても重要な要素のひとつとなります。
その理由は以下の点においてです。
・起業融資いわゆる「創業融資」は、決算書など実績に関係なく借りられる、起業時ならではの融資であること
・起業融資を成功させることで、資金繰りをより安定させ、事業を早い段階で軌道に乗せることができる
・起業時から金融機関との関係性をより良いものにしておくことで、いざ次の融資を借りたい時に慌てないで済む。もちろん収支計画をきちんと立て、自社の財務状況を把握していることが前提です。
・金融機関はお金に困ってからでは貸してくれない。なので比較的借りやすい起業時に新規取引を開始し、借りられる時に借りられるだけ融資を受けておくことで、資金繰りリスクを最低限に抑えられる
例えば起業時に自己資金が充分にあり、融資をあまり必要としていない場合であっても、借りられるのであれば起業融資は受けておいたほうが良いと私は考えます。
なぜなら、金融機関はお金に困ってからではお金を貸してくれないからです。
また、起業時の創業融資と違って、創業後時間がたってからの融資の場合には、資金の使い道が非常に重要なポイントとなります。
なぜなら、銀行がお金を貸せるのは、前向きな資金だけだからです。
お金に困っているから融資を受けたいのに、金融機関はお金に困っている会社には融資をしてくれないという矛盾が生じます。
ではどうすれば良いかというと、自社の財務をきちんと把握し、お金に困る前に融資を受けること、そしてお金に困る前に金融機関との関係性を築くことです。
金融機関との関係性を構築するには、融資を受け、毎月きちんと利息とともに返済する実績をつくることです。
これを一番最初にやるべきタイミングが起業融資です。
決算書が悪ければ(赤字)では、金融機関からの融資は、ほぼ難しいでしょう。
しかし、創業時にはまだ会社の決算書がないため、融資要件に決算書の提出はありません。
事業を始めてから年数が経過するほど、実績を求められるため、決算書なしには融資はおりません。
ですから、決算書などに関係なく借りられる、起業時ならではの融資を借りておくことは、いいスタートを切りたい起業家にとっては、非常に重要であると言えます。
次からは、起業融資を成功させるポイントについてお話しします。
1.起業融資で金融機関が見るポイント5つ
起業融資で金融機関が見るポイントは以下の5点になります。
・自己資金が最低100万円。できれば300万円程度はあること
・数値が現実的で、実効性の高い「事業計画書」
・起業する人の“人となり”
・自分のステージにあった金融機関選び
・過去に事故歴(カード払いや公共料金の未納)がないか
以下から順に説明していきます。
1-1.自己資金
起業融資で金融機関が見るポイントのひとつは「自己資金」です。
・自己資金とは…自分でコツコツ貯めたお金のこと。退職金も含む。
自己資金とは、自分で働いてコツコツ貯めたお金のことであり、親や友人から一時的にだけ借りたような、いわゆる「見せ金」は自己資金とは言いません。
※ただし、親から借りたのではなく、貰ったお金であれば、自己資金とみなされます。その場合、親の通帳を証明書類として用意することが必要となります。
起業融資を成功させるためには、自己資金の有無は非常に重要な要素です。
自己資金なしの融資が非常に難しい理由は、次にお話しします。
1-1-1.「自己資金なし」の融資が非常に難しい理由
起業融資の選択肢のひとつである、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」や、「制度融資」には、いわゆる自己資金要件がありません。
つまり制度の上では、自己資金なしでも融資可能、ということになります。
しかし、現実的には自己資金なしの融資は極めて難しいと言えます。
なぜなら、金融機関にとっては「自己資金なしに融資」 イコール 「本人は何のリスクも背負わず、金融機関だけがリスクを背負う」という状況にあるからです。
自己資金がないということは
・起業を考えているにもかかわらずお金の準備を全くしていない
・起業に対して計画性がない
・起業への本気度が感じられない
といったように見られてしまうからです。
ただし、以下のような場合には、自己資金がなくても融資が可能なこともあります。
・特許がとれるような特殊な技術を持ち、実績の示せる事業計画書が提出できる
・すでに人脈があり、起業すれば必ず取引先が確定でき、なおかつそれを証明できる資料がある
・事業経営を問題なくやっていけるだけの知識・経験があり、それを証明できる
・すでに取引があって契約書が出せる、実際に決まっている仕事の証明書類が出せる
ただし上記のような場合でも、自己資金なしですと、融資の条件が悪くなる(金利、担保、保証人など)ことがあり、難しい状況であることにかわりはありません。
それほど金融機関にとっては、自己資金の有無は重要である、ということになります。
1-1-2.コツコツ貯める自己資金の持つ意味
起業時の融資では、事業の実績がまだありません。
そういう時、金融機関がどこで融資の判断をするのかというと、やはり最後は「その人自身」です。
金融機関の目的は、お金を貸して、利息をつけて返してもらうことですから、それが実行できるかどうかの判断のひとつは、「自分でコツコツ貯めた実績」ということになります。
一瞬だけ友人から借りたような、いわゆる「見せ金」は自己資金とはいわず、金融機関からの信用もありません。
それに、自分の夢や想いを本気で実現したいと考え起業する人は、たとえしばらくの間、貧乏生活をしたとしても、計画的にしっかりとお金を貯めてから起業するものだと金融機関は考えます。
多額の資金がなくても大丈夫ですが、最低でも100~300万円を自分でコツコツ貯めることが、起業融資を成功させる大きなポイントと言えます。
1-2. 数値が現実的で、実効性の高い「事業計画書」
起業融資で金融機関が見るポイント2つめは、数値が現実的で、実効性の高い「事業計画書」です。
ここでのポイントは、事業計画書の作成において、その事業がいかに大きく成功するかどうかではなく、「本当に実現可能な数値であるかどうか」ということです。
金融機関はあなたの興す事業がどれほど成功し、どれだけ売上が伸びるかに興味があるわけではありません。
金融機関が求めていることは「貸したお金を利息をつけてきちんと期限内に返してもらえるかどうか」です。
過大に売上の数字を釣り上げて見栄えをよくするよりも、現実的で確実な事業計画書を作成して提出する方が融資は通りやすいと言えます。
融資は一度断られると、次の融資はさらに難しくなります。
金融機関との信頼関係を崩さないようにするためにも、事業計画書は現実的な数値を落とし込むようにしましょう。
具体的には以下のような事業計画書が求められます。
・売上が月によって上下する業種の場合には、繁忙期、通常時、閑散期など3つにわけて作成
・業界的な平均値と見比べながら、現実的に可能な数値を入れる
・これまでの実績値があるのであれば、それとかけ離れた数値にはしない
・売上根拠が不十分だったり、経費の見込みが甘い事業計画書でないこと
上記のような事業計画書作成の考え方は、融資を受ける受けないにかかわらず、経営者として事業を行ううえでも身につけておきたい、とても大切な考え方となります。
金融機関に「行き当たりばったりでなく、きちんと現実に考えている経営者である」という信用をつけることが大切です。
1-3. 起業する人の“人となり”
起業融資で金融機関が見るポイント3つめは、起業する人の“人となり”です。
金融機関が見ているポイントとしては、「信頼できる人かどうか」です。
起業するに際して、夢ばかりみて現実的でない人には、金融機関からの融資は難しいでしょう。
では、金融機関がどのようなところを見て、信用できる人と判断するかは以下の点です。
・自己資金をコツコツ貯めてきた人
・自己資金が「見せ金」でないこと
・事業計画書が現実的な数値で作られていること
・起業する内容が、今までの経験やノウハウを元としていて実現可能であること
・過去に延滞など「事故歴」がないこと
・サラ金などからの借入れがないこと
・面談や書類で嘘をついていないこと
決算書など今までの事業の実績のない起業融資においては、その人自身を信用してお金を貸してくれるわけですから、上記のような点をクリアしていない場合、起業融資は難しいと考えましょう。
1-4. 自分のステージにあった金融機関選び
起業融資で金融機関が見るポイントの4つめは「自分のステージにあった金融機関を選ぶこと」です。
金融機関選びの考え方は以下の様になります。
・メガバンク…年商10億円規模
・地銀…年商5億円規模(1〜5億円)
・信金・信組…年商1億円規模(〜1億円)
メガバンクは社外的な見栄えも良いですし、なにより融資の金利が安く、メインバンクとしたい気持ちはわかります。
しかし、起業時の融資先としてはハードルが高く、融資を断られる可能性が非常に高いのが現実です。
融資先の選択でここを間違えてしまうと、資金調達がうまくいかなくて経営が行き詰まる結果となってしまいます。
今の自分のステージにきちんとあった金融機関選びがとても重要です。
1-5. 過去に事故歴(カード払いや公共料金の未納)がないか
起業融資で金融機関が見るポイント5つめは、過去に事故歴がないかどうかです。
いわゆる事故歴とは以下のようなものを言います。
・クレジットカードや住宅ローンの引き落としができず、3ヶ月以上滞納した
・公共料金の支払いが未納である
・支払っていない税金がある
・携帯電話の支払いを滞納したことがある
・自己破産、債務整理
クレジットカードや住宅ローンの延滞などのいわゆる「金融事故」の場合ですと、その情報が「信用情報機関」に記録されてしまいます。
信用情報機関とは、個人のカード発行や利用状況、ローンの借入額などの信用情報を管理している公的な機関のことです。
信用情報機関はいくつかありますが、クレジットカード審査の場合は、CIC(シーアイシー)という機関があります。
この情報は費用はかかりますが、一般の方でも本人が申請すれば確認することができますので、不安に感じる場合は確認してみるといいでしょう。
ただ、支払予定日を少し遅れたからといって即事故扱いになるわけではありません。
残高不足などのウッカリは誰にでもあるものなので、およそ1か月以内に引き落としができていれば問題はないでしょう。
2.起業融資の借りる先2つ
起業時の借りる先には以下の9つがあります。
・親や親戚、友人や知人
・日本政策金融公庫
・メガバンク(大手銀行)
・地方銀行
・信用組合・信用金庫
・助成金・補助金
・ベンチャーキャピタル
・個人投資家
・ノンバンク(消費者金融・信販会社)
中でも、起業融資に際して現実的なものでいうと「日本政策金融公庫」と「信用組合・信用金庫」の2つがあげられます。
これらについてご説明します。
2-1.日本政策金融公庫
起業融資先として一番現実的なものとして、日本政策金融公庫があります。
日本政策金融公庫には起業に際して「無担保、無保証人」の「第3者保証人等を不要とする融資」があります。
一般の金融機関ではよほど実績がよくない限り「無担保、無保証人」では借入はできないため、中小企業の強い味方といえます。
2016年現在、起業融資として日本政策金融公庫の商品には以下のものがあります。
(2016年現在)
・中小企業経営力強化資金
・新創業融資
上記ふたつのうち、中小企業経営力強化資金は、新創業融資に比べ金利が多少低く、起業する業界の経験が6年必要という要件がないので、現時点では起業時に借りやすい商品となります。
ただし、中小企業経営力強化資金は「認定支援機関」のサポートが必要となります。
・認定支援機関とは
中小企業や小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるために、専門知識や、実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関です。
具体的には、商工会や商工会議所、金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等が主な認定支援機関として認定されています。認定支援機関は中小企業庁の「認定経営革新等支援機関」で調べられます。
2016年現在の日本政策金融公庫の制度では、中小企業経営力強化資金の方が起業融資にはオススメな商品と言えます。
しかし、制度は常に変わっていくものです。
本当のおススメは、その時、その方に一番適しているのは何かということを考慮する必要があります。
それは上記の2択でない可能性も大いにありえます。
1番は、起業融資に強い相談者(認定支援機関など)に相談し、今の自分に最も最適な形を見つけることです。
なぜなら日本政策金融公庫は、中小企業が1番借りやすい金融機関であるとはいえ、融資を断られることがないわけではないからです。
以下のような場合は、日本政策金融公庫でも融資を断られる原因となります。
・自己資金が足りない
・通帳の履歴がなく「見せ金」の可能性
・過去に延滞など「事故歴」がある
・サラ金などからの借入れがある
・面談や書類での嘘がバレた
・そもそも収支計画が成り立たない
上記のような理由で断られた場合は、再申請をしたとしても、融資を通すのは難しくなります。
しかし、以下のような理由の場合は、もう一度きちんと見直せば再申請が通る可能性があります。
・収支計画書の作り込みが現実的でなかった(売上根拠が不十分、経費の見込みが甘いなど)
・融資の申込金額が必要以上に大きかった
上記1-2. 数値が現実的で、実効性の高い「事業計画書」でも記載した通り、過大に売上の数字を釣り上げて見栄えをよくするよりも、現実的で確実な事業計画書を作成して提出する方が融資は通りやすいのです。
また、現実的な事業計画書をもとに、大きすぎず、実際に必要な融資額を申請することも大切です。
日本政策金融公庫の融資は一度断られると、その後6か月間申し込みができなくなります。
金融機関との信頼関係を崩さないようにしましょう。
2-2.信用金庫・信用組合
日本政策金融公庫の次に、起業融資として考えるべきは「信用金庫・信用組合」になります。
「1-4. 自分のステージにあった金融機関選び」でもご説明しましたが、まだ売上のない起業融資のステージにあった融資先としては信用金庫・信用組合になります。
なかでも、「信用保証協会の保証付融資」が起業融資としては現実的です。
・信用保証協会とは
信用保証協会とは、中小企業・小規模事業者が金融機関から事業資金を調達する際に、保証人となって融資を受けやすくなるようサポートする公的機関のことです。
金融機関との取引が浅い中小企業・小規模事業者が融資を受ける際に、信用保証協会が保証をしてくれる融資のことを「保証付融資」と言います。
・信用保証協会の保証付融資とは
保証付融資は、万が一、借主の返済が滞った場合に、借主に代わって信用保証協会が金融機関に「立て替え払い」を行ってくれます。
保証を利用する際には、所定の信用保証料を支払う必要があります。
保証を利用する際には、原則として、法人代表者以外の連帯保証人は必要ありません(必要な場合もあり)。
要件として、許認可・届出等を要する事業を営む場合は、その許認可等を受けることが必要です。
申請は、各信用保証協会の管轄区域に申請します。
現在、中小企業が全国で385万企業のうち、信用保証の利用企業数は、146万企業です。
公的金融機関の中でも利用が多く、また、利用企業の9割は「従業員数が20名以下」の小規模企業であることも、起業融資として借りやすい融資の1つとなります。
・プロパー融資とは
同じように信用金庫・信用組合からの融資であっても、信用保証協会の保証付でない、金融機関からの直接の融資を「プロパー融資」と言います。
信用保証融資の申込窓口は「金融機関」と「信用保証協会」です。
そのほか、地方自治体や商工団体(商工会議所や商工会、中央会等)でも受付を行っていることもあります。
自分から言わなくても、信用金庫・信用組合に融資を申し込むと、信用保証協会の保証付融資を勧められることもあります。
起業時の融資としては「保証付融資」が現実的といえるでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
起業融資は、事業を軌道に乗せるためには重要な要素のひとつです。
安易に手を出して断られてしまうと、しばらくは借りることが出来なくなり、資金繰りが悪化してしまう可能性があります。
借りることを検討する際には、上記を参考に要件を満たし、自分にあった金融機関を選ぶようにしてください。