元入金とは簡単にいうと、法人での「資本金」にあたり、つまり個人事業主が開業するにあたって準備した元手になります。
ただ、資本金とは大きく違う点もあり、取り扱いには注意が必要です。
ここでは、元入金についてわかりやすく説明しています。ぜひ参考にしてください。
参考:個人事業主の確定申告ガイド|フロー図を用いてわかりやすく解説
もくじ
1. 元入金を理解するポイント5つ
2.元入金は個人事業主のみが使用する勘定科目
3.元入金は法人での「資本金」にあたる
4.資本金との大きな違いは、金額が毎年変わること
5.個人の確定申告時に元入金を会計処理する
6.元入金は帳簿上マイナスでも問題はない
1.元入金を理解するポイント5つ
元入金を理解するポイントは以下になります。
- 元入金は、個人事業主のみが使用する勘定科目
- 元入金は法人での「資本金」にあたる
- 資本金との大きな違いは、金額が毎年変わること
- 個人の確定申告時に元入金を会計処理する
- 元入金は帳簿上、マイナスでも問題はない
2.元入金は個人事業主のみが使用する勘定科目
元入金は、個人事業主やフリーランスなど、個人のみが使用する勘定科目です。
勘定科目とは、取引が発生した時に生じるお金の増減を記録するための、簿記上の名前のことをいいます。
勘定科目には、よく聞くものだと、普通預金、水道光熱費、接待交際費、広告宣伝費、売掛金、買掛金、などがあり、これらと同じ、簿記で使う勘定科目のひとつとなります。
この元入金と同じで、個人事業主のみが使用する勘定科目がいくつかあります。
元入金の会計処理にも必要になるものもあるので、覚えておくといいでしょう。
- 事業主借…個人事業主が事業に無関係な収入がある時に使用する勘定科目。具体的には、事業用の文房具をプライベート用のクレジットカードから支払った、事業用のお金が足りなくなったのでプライベート用のお金を事業用の口座に入金した、事業用の口座に利息がついた、などがあります
- 事業主貸…個人事業主が事業に無関係な支出をした時に使用する勘定科目。具体的には、事業用の口座から生活費のためのお金をおろした、のクレジットカードで個人の生活用品を買った、事務所を自宅と兼用している場合に事業用口座から家賃や水道光熱費を支払った、などがあります。
- 青色専従者給与…青色事業専従者に対する給与、賞与を計上する際に使用する勘定科目。
3.元入金は法人での「資本金」にあたる
元入金は、法人での「資本金」にあたります。
資本金とは、法人(株式会社など)が事業をスタートするにあたって、株主から集めた開業資金や準備金になります。
個人事業主の場合は、事業主自身があらかじめ用意した開業資金や準備金が元入金となります。
上記でもお話ししたとおり、元入金は個人事業主のみが使用する勘定科目ですので、法人会計では元入金という勘定科目は使用しません。
4.資本金との大きな違いは、金額が毎年変わること
元入金と資本金との大きな違いは、金額が毎年変わるところにあります。
資本金は、増資という手続きをふまない限りは、基本的に開業時の資本金金額が記載され続けます。
元入金の場合は、帳簿上、次年度へ会計処理をスタートさせる際に「元入金」勘定を使って仕訳をすることで、事業主借と事業主貸の金額を0にして期首をスタートさせる必要があります。
ですので、確定申告時には、事業主借と事業主貸を相殺した残高の差額を、元入金に振り替える作業を行います。
少し言っていることが難しいと思いますので、詳しくはこのあとの5でお話しします。
5.個人の確定申告時に元入金を会計処理する
元入金は、個人の確定申告時に会計処理することが必要となります。
具体的には、事業主借と事業主貸の金額をお互いに相殺し、残高の差額を元入金に振り替える作業を行います。
なぜこの作業を行うのかというと、期中に発生した事業主借と事業主貸の金額を0にしてから翌期首をスタートさせる必要があるからです。
期末の帳簿
・事業主貸…800
・事業主借…200
・今年の事業で得た利益…100
・元入金…300
(計算式)300+100+200-800=△200
翌期期首の帳簿
・事業主貸…0
・事業主借…0
・元入金…△200
※わかりやすくするために簡単に表現しています。
実際には(期末の元入金の額)+(青色申告特別控除前の所得金額) +(期末の事業主借)-(期末の事業主貸)で求められます。
事業主貸の方が多い場合は元入金をマイナスし、事業主借が多い場合は元入金をプラスします。
確定申告時には、上記のような計算式で、翌期首の事業主借と事業主貸の残高をゼロにするため、元入金に振り替える作業を行います。
基本的には、この振替作業は、会計ソフトを使用している場合は、自動的にやってくれるものがほとんどです。
※国税庁「貸借対照表作成の手引き」の記載について
国税庁の発行している「貸借対照表作成の手引き26.11」の元入金のページには「期末(12月31日)の元入金の金額は、期首(1月1日)の元入金と同額です。」という記載があります。これは、前期末と翌期首が同額、という意味ではなく、今期末と今期首が同額という意味です。混乱しやすいので間違えないようにしてください。
6.元入金は帳簿上マイナスでも問題はない
元入金は金額がマイナスになってしまうこともありますが、それでも帳簿上は問題はありません。
上記5の例では、儲かった利益より事業主貸の方が多い、つまり利益より生活費として持ち出したプライベート用のお金の方が多いので、元入金はマイナスになりました。
帳簿上、元入金はマイナスでもかまいませんが、決算を迎えるごとに元入金が少しずつ増えてくる方が健全な経営と言えるでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか。
元入金は、通常の経理業務では使用することのない勘定科目ですし、あまり聞いたことのない言葉なので戸惑うことも多いと思います。
ぜひ上記の内容を参考にしてください。