あなたは今、経営理念についてお考えのことと思います。
経営理念とは、社長の想いそのものであり、会社における活動方針のもととなる基本的な考え方となります。
中小企業には、経営理念を明確に定めていないところもあるかと思いますが、いい会社を作るためには、社内外に社長の想い・考えを広めるための経営理念はとても重要なものになります。
ここでは、経営理念の考え方、作り方などをお話しています。
ぜひ参考にしてください。
もくじ
0.経営理念の無い会社は存在しない
1.経営理念とは社長の想いそのもの
2.経営理念のメリット・デメリット
2-1.社長の想いが明確化する
2-2.価値観の共有がはかれる
2-3.迷った時の軸足ができる
2-4.人を採用する時の判断基準となる
2-5.業績があがる可能性がある
2-6.経営理念のデメリット
3.経営理念の具体的な作り方
3-1.キーワードとなる言葉を探す
3-2.キーワードの入った経営理念を探しだす
3-3.同業他社の経営理念を調べてみる
3-4.経営理念を作る時の注意事項
3-4-1.誰にでもわかりやすく
3-4-2.かっこよさよりも分かりやすさ
3-4-3.迷った時の軸足となりうるか
3-4-4.目標や手段になっていないか
3-4-5.社内外の人に共感してもらえるか
3-4-6.造語でも構わない
3-4-7.また作り変えても構わない
0.経営理念の無い会社は存在しない
まず初めに、私は経営理念の無い会社はこの世の中に存在しないと考えます。
なぜなら経営理念とは、会社を経営する社長の想いそのものだからです。
たとえ社長1人の会社であっても、会社を経営していくにあたっては、何かしらの想いや考えを持って行動しているものです。
中小企業には経営理念が無いのではなく、単に社長自身もその想いを言葉にできていない、もしくは本人もその想いに気付いていない状態に過ぎません。
中小企業に経営理念が必要なのか、と言われれば、私は絶対に必要と答えます。
なぜなら、経営理念はその会社の「行動指針」であると同時に、迷った時の「判断基準」でもあるからです。
経営理念という「共通価値観」があるからこそ、会社はひとつにまとまることができます。
また、あまり質の良くないお客様との取り引きに迷った時、経営理念という軸足があれば、正しく戻ってくることも可能です。
つまり、経営理念があれば、その理念に共感してくれる社員やお客様、取引先とだけ付き合いができるようになり、経営にいい影響を与えるようになります。
経営理念は、社長の想いそのものですから、社長自身が作らなければ、誰も作ることはできません。
ここでは、社長自身も言葉にできていなかった想いを形にするやり方についてお話ししています。
ぜひ参考にしてください。
1.経営理念とは社長の想いそのもの
先ほどからお話ししているとおり、経営理念とは何かといえば、一言でいうなら「社長の想いそのもの」です。
社長がこの事業を行うにあたって、誰のために、何のために、どんな夢を持ち、経営における社会的意義などを端的に言葉に表したもの、それが経営理念です。
会社の経営理念がないと、そこで働く社員は、何のためにここで働いているのか、この会社が今後どうなっていくか、迷った時にどうしたらいいかもわからず、途方に暮れてしまいます。
つまり、経営理念がない=社長が何を考え、どこを目指しているのかわからない会社、ということです。
経営理念とは、社内においては共通価値観であり行動指針ですし、社外から見ればその会社が何を大切にして経営しているか、取引相手として信用にたる相手と成り得るかを表すひとつの材料ともなるものです。
社長が事業を始めるとき、その動機はお金のためであることは多いですが、人はやはりお金儲けのためだけでは誰もついてきてはくれません。
特に従業員を雇う段階になった時、社長が社員をお金儲けの道具のように思っていては、社員から最高のパフォーマンスを引き出すことは難しいでしょう。
人を動かすもの、それは人の想いです。
そして社長の想いを表すもの、それは経営理念です。
経営理念は、会社の売上とつながっていると言っても過言ではありません。
社長の想いが経営理念として伝わることで、社内外の人を動かすのです。
最高の経営理念は人を動かすもの、それが本当に良い経営理念です。
2.経営理念のメリット・デメリット
経営理念のメリット、デメリットは以下のようになります。
2-1.社長の想いが明確化する
ひとつは社長の想いが明確化するということです。
社長は経営を行う上で、何かしらの想いや考えを持って行動しています。
しかし、それを明確に言葉としていい表すことはなかなか難しい作業です。
ましてやそれを社内外の人に、わかりやすく端的に説明するのは相当大変なことです。
経営理念は、社長の想いを言葉として社内外に明確化する役割があります。
2-2.価値観の共有がはかれる
2つ目は、社内外の人に対して価値観の共有がはかれることです。
自分はこういった価値観で事業を行っているということを明確にすることで、その価値観に共有できる人を集めることができます。
価値観を共有できれば、たとえ性格の全く違うもの同士が集まったとしても、向いている方向が同じですから、皆が違うパフォーマンスをしても事業が間違った方向に行くことはありません。
2-3.迷った時の軸足ができる
事業を行っていれば、社長でさえ自分の判断に迷うことはあります。
特に大口契約であったり、目先の大きな利益に目がくらむことはあるでしょう。
そういった時に、経営理念を思い出し、本当に自分の判断が経営理念に照らし合わせて正しいのかどうか、冷静に判断してみることが大切です。
バスケットのピボットのように、経営理念に軸足を置いて、いろいろな方向に足を踏み出すことは良いでしょう。
しかし、軸足そのものを動かして足を踏み出すことは、バスケットにおいても反則行為ですし、経営においてもやはり良くない行為です。
経営判断に迷った時は、経営理念に軸足をおいて考えてみましょう。
2-4.人を採用する時の判断基準となる
4つめは、人を採用する時の判断基準となることです。
経営理念は社長の想いそのものですから、この経営理念に共感できない人は、たとえどんなに優秀な人でも採用すべきではありません。
面接時には、この経営理念についてどう思うか、どう感じたかを聞いてみるといいでしょう。
良い経営理念は、人を動かすものです。
たとえ採用者が上手に言葉にできなくても、経営理念に本当に共感している人からは、何かしらを感じることができるはずです。
また、本当に経営理念に共感して入社した人は、その後の定着率も良い結果になる場合が多いでしょう。
2-5.業績があがる可能性がある
5つめは、業績があがる可能性があるということです。
経営理念に共感してくれる人を集めた会社ですから、自然と向いている方向が同じになり、経営理念のない会社に比べて業績はあがりやすくなります。
ただ、業績があがるから経営理念を作るのではなく、経営理念があることで社員の共通価値観が生まれ、結果業績があがりやすくなる、ということです。
経営理念が社員の共通価値観として浸透することが大事であり、業績の上昇は副産物に過ぎません。
2-6.経営理念のデメリット
経営理念のデメリットとしては、作る過程において、社長の想いを言葉にするという作業がとても大変だということがあげられます。
社長は経営を行うにおいて、何かしらの想いや考えがあるものの、それをいざ言葉にするとなると、意外と何も出てこない、ということが多いものです。
今まで、想いを言葉にするという作業を行ったことがないわけですから当然です。
中には、面倒だからやめてしまおうと考える人もいるかもしれません。
しかし、経営理念はその面倒な作業を考えてみても、必ず作ったほうが良いものと断言できます。
次からは、具体的な作成の手順についてお話ししますので、ぜひ参考にしてみてください。
3.経営理念の具体的な作り方
経営理念の具体的な作成手順です。
必ずしもこの通りに作らなくてはいけないわけではありません。
社長の想いが伝われば、それが1番良いのです。
言葉作りは苦手、という場合には、下記の手順を参考に作ってみてください。
3-1.キーワードとなる言葉を探す
まずは、社長の想いのキーワードとなる言葉を探します。
最初は、単語でも文章でも日本語でも英語でもなんでも構いません。
片っ端から書き出していきます。
意味のわからない言葉でもなんでもあげていきましょう。
とにかくたくさんあげてみます。
あげる内容としては以下のようなものです。
・誰のために
・何のために
・どうしてこの事業をやっているのか
・将来どうなりたいのか、夢は
・社員にどうなってもらいたいのか
・社会にどう貢献したいのか
3-2.キーワードの入った経営理念を探しだす
社長の想いを片っ端から書き出してみると、「このキーワードいいな」と思うようなものがいくつかあがってきます。
例えば「環境」というキーワードだったら、「環境 経営理念」という検索結果を洗い出してみましょう。
他社がどういった経営理念を作っているのか、参考にしてみます。
3-3.同業他社の経営理念を調べてみる
同業他社の経営理念についても、インターネットを使って調べてみましょう。
例えば「不動産業 経営理念」のように、検索結果に出たものを書き出してみます。
同業他社の経営理念の中にも、同じようにキーワードとなる言葉が隠されています。
そういったものも、参考にしてみるといいでしょう。
3-4.経営理念を作る時の注意事項
3-4-1.誰にでもわかりやすく
経営理念は出来るだけ短く、誰にでもわかりやすいことが大切です。
他社を参考にすると、かなり長い文章で書いてあるものも多くあります。
しかし経営理念は、社長の想いを誰が見ても、それこそ小学生が見てもわかるくらいのもののほうが、相手の心にスッと入りやすいものです。
共感してもらうことが大事なわけですから、誰にでもわかりやすいというのはとても重要です。
3-4-2.かっこよさよりも分かりやすさ
英語などを使ってかっこよくするのも悪くはありませんが、英語の意味が広く一般的に使われているものに限ります。
良い経営理念は誰にでも共感できることですから、辞書を開かなければわからないような英単語を使った経営理念は、人の心を動かす経営理念とは言えません。
3-4-3.迷った時の軸足となりうるか
経営理念は、経営判断に迷った時などには考え方の軸足となることが理想です。
これだけは絶対に譲れない、という想いが込められているものが良いと言えます。
3-4-4.目標や手段になっていないか
経営理念は社長の想いを言い表したものです。
例えば「売上20億達成!」というのは目標であって経営理念ではありません。
また「(売上20億達成のために)人を10人採用する!」というのも、目標に対する手段であって経営理念ではありません。
経営理念とは、社長の想いや考え方であり、目標や手段ではないため、注意が必要です。
3-4-5.社内外の人に共感してもらえるか
経営理念を作るからには、社内外の人に共感してもらえるものになっているかは大切です。
ひとりよがりなものを作ってはいけません。
ただ、全員の人に共感してもらえる必要もありません。
万人受けする、きれいごとな言葉を並べても、人の心を動かす経営理念とは言えません。
やはり社長の想いがきちんと表れているかどうかが一番大切です。
3-4-6.造語でも構わない
社長の想いが伝われば、造語でも構いません。
きれいな言葉をお行儀よく並べることが経営理念ではありません。
例えば、すばる会計事務所のクレドの中にある「すばるマンシップ」という言葉は、スポーツマンシップからとった造語です。
四文字熟語などをそのまま使うのも良いですが、社長の想いのキーワードや単語をそのまま繋げて造語にするなどしても良いでしょう。
3-4-7.また作り変えても構わない
あまりしょっちゅう経営理念を作り変えるのはおかしいですが、その会社のステージに合わせて、経営理念を作り変えても良いでしょう。
つまり、今回作る経営理念を、永遠に使い続けなければいけないわけではありません。
人が増えた時、組織を変えた時、社長が変わった時など、その時その時で今大切にしたい会社の想いも変わるものです。
まずは、今の自分の大切にしたい想いを言葉にすることが大切です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
経営理念は、社長の想いそのものであり、会社の「行動指針」です。
経営理念があることで、社員も、時には社長も、迷わず同じ方向を向いて経営を行うことができるのです。
ぜひ、上記を参考にして、経営理念を作ってみてください。