保険料控除とは、その年に支払った保険料の一定額(または全額)が、保険料負担者のその年の所得から控除され、所得税と住民税が軽減される制度です。
ここでは、年末調整における保険料控除申告書の書き方に加えて、保険料控除の様々な疑問についてお答えします。
ぜひ参考にしてください。
※副業などで確定申告がある方は「会社バレを防ぐ!副業しているサラリーマンが注意したい確定申告の方法」もご覧ください。
もくじ
0. 年末調整の保険料控除申告書を作成するためのポイント
1. 保険料控除証明書を集める
2. 生命保険料控除の書き方と注意点
2-1. 生命保険料の種類
2-2. 保険会社の名称、保険の種類、保険期間
2-3. 保険等の契約者の氏名
2-4. 保険金等の受取人
2-5. 新・旧の区分
2-6. あなたが本年中に支払った保険料等の金額(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)
2-7. 生命保険料控除の計算方法
3. 地震保険料控除の書き方と注意点
3-1. 対象となる保険料
3-2. 地震保険料または旧長期損害保険料の区分
3-3. あなたが本年中に支払った保険料等のうち左欄の区分に係る金額(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)
3-4. 地震保険料控除額を計算
4. 社会保険料控除の書き方と注意点
4-1. 年末調整で記入する社会保険料控除の種類
4-2. 自分や家族の国民年金保険料
4-3. 自分や家族の国民健康保険料
4-4. 国民年金基金の掛金
4-5. 後期高齢者医療制度の保険料、介護保険法の規定による介護保険料
5. 小規模企業共済掛金控除の書き方と注意点
0. 年末調整の保険料控除申告書を作成するためのポイント
まずは、年末調整の保険料控除申告書を書くためのポイントをお話します。
- 保険料控除証明書を集める
- 保険料控除の種類は、生命保険、地震保険、社会保険、小規模企業共済の4種類
- 生命保険・地震保険は控除できる上限があるので、自分で記載しながら控除できる金額を計算する
- 社会保険・小規模企業共済は保険料の全額が控除できる
以下から、4つの保険料控除についてそのポイントについてご説明します。
1. 保険料控除証明書を集める
年末調整で保険料控除を受けるためには、まずは保険料控除証明書を集める必要があります。
基本的には、該当する保険がある場合には、自動的にハガキ形式で10月~11月頃に送られてくるのが一般的です。(例外もあります)
これは必ず原本でないといけないので、もし送られてこなかった場合や、無くしてしまった場合にはすぐに電話して発行してもらいましょう。
年末調整が集中する11~12月には再発行が混み合う季節ですので、急いでいる旨を伝えるのが良いです。
2. 生命保険料控除の書き方と注意点
年末調整の生命保険料控除申告書の書き方と注意点です。
基本的には控除証明書に記載されている通りに記入します。
順に説明していきます。
2-1. 生命保険料の種類
生命保険料の種類には、以下の3つがあります。
・一般の生命保険料
・介護医療保険料
・個人年金保険料
基本的に、この保険は何の保険料だろうと考える必要はありません。
控除証明書に書いてある種類が、その保険の種類になります。
2-2. 保険会社の名称、保険の種類、保険期間
保険会社の名称、保険の種類、保険期間は、控除証明書に記載されているので、その通りに記入します。
2-3. 保険等の契約者の氏名
保険等の契約者の氏名は、基本的には控除証明書の通りに記載します。
改姓・改名している場合でも、改姓前の生命保険料控除証明書で申告することが可能です。
もし、妻が契約者である生命保険契約で、夫が保険料を支払っている場合でも、夫が支払った保険料は夫の生命保険料控除の対象となります。
つまり、保険料を実際に支払っている人が保険料控除の対象となります。
2-4. 保険金等の受取人
保険金等の受取人の氏名、続柄は控除証明書には記載されていません。
お手元の保険証券か、わからない場合は保険会社に聞いてみましょう。
なぜ保険金等の受取人を記載するのかというと、保険料控除の対象となるのは「保険金等の受取人のすべてをその保険料の払込みをする者、またはその配偶者その他の親族」と定めているからです。
つまり、保険金の受取人が第三者の場合は、保険料控除の対象とならないのです。
基本的にはそのような保険はまれだとは思いますが、きちんと記載しましょう。
2-5. 新・旧の区分
これも、基本的には控除証明書に記載されている通りに○をします。
新と旧では、計算方法が違うので間違えないようにしましょう。
・新…契約締結日が平成24年1月1日以降の保険
・旧…契約締結日が平成23年12月31日以前の保険
なお、介護医療保険は新しかないので用紙に区分がありません。
2-6. あなたが本年中に支払った保険料等の金額(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)
これも控除証明書の通りに記載するのですが、控除証明書には「証明額」と「申告額」があるので注意してください。
基本的には「申告額」を記入します。
・証明額…ハガキを発行した時点での支払済みの金額。こちらは基本的には記入しない。
・申告額…年末まで支払った場合の金額。基本的にはこちらを記入する。
だいたい控除証明書のハガキは10月に届くので、月払いの場合は証明額は2ヶ月分少ない金額が記載されています。
ですので、実際に記入する金額は年末まで支払った場合の申告額を記入します。
2-7. 生命保険料控除の計算方法
基本的には用紙の通りに、左から順番に記載していきます。
・A…新の保険料の合計。
・B…旧の保険料の合計。
・(1)…Aの金額を用紙下の計算式Ⅰにあてはめて計算。
・(2)…Bの金額を用紙下の計算式Ⅱにあてはめて計算。
・(3)…(1)と(2)の合計。40,000を超えた場合は40,000と記入。
・(イ)…(2)と(3)のいづれか大きい金額。50,000を超えた場合は50,000と記入。
3. 地震保険料控除の書き方と注意点
年末調整の地震保険料控除申告書の書き方と注意点です。
基本的には控除証明書に記載されている通りに記入していきます。
順に説明していきます。
3-1. 対象となる保険料
地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約の条件は以下になります。
- 自己、もしくは自己と生計を一にする配偶者、その他の親族が所有している家屋
- 常に居住用に使用する生活用動産(投資用などは対象外)
- 地震、噴火又は津波を原因とする火災、損壊等による損害をてん補する保険金や共済金が支払われるもの
上記すべてに該当するものでないと控除の対象となりません。
3-2. 地震保険料または旧長期損害保険料の区分
旧長期損害保険料とは、以下の要件を満たす長期損害保険料を指します。
- (1)平成18年12月31日までの契約
- (2)満期返戻金等のあるもので保険期間が10年以上の契約
- (3)平成19年1月1日以後にその損害保険契約の変更をしていないもの
基本的には、保険料控除証明書に「地震」や「旧長期」の区分が記載されているので、その通りに記入します。
ひとつの保険で、地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払っている場合には、納税者の選択によりいずれか一方の控除を受けることが出来ます。
基本的には地震保険の方が控除額が大きいのでそちらを選択したほうが良いでしょう。
3-3. あなたが本年中に支払った保険料等のうち左欄の区分に係る金額(分配を受けた剰余金等の控除後の金額)
基本的には、控除証明書の通りに記載しますが、生命保険料と同じように、月払い契約の場合は、年末までの申告額が記載されているので、そちらを記入します。
3-4. 地震保険料控除額を計算
地震保険料の控除額の計算方法は以下の通りです
・B欄に地震保険料、C欄に旧長期損害保険料を記載します
・その下にBの金額(50,000を超えたら50,000と記入)と、Cの金額(Cが10,000を超える場合、2で割って5,000をプラス。15,000が上限額)を記入します
・最後にふたつを足します(50,000が上限額)。
4. 社会保険料控除の書き方と注意点
年末調整の社会保険料控除申告書の書き方と注意点です。
社会保険料控除は全額を記入でき、控除額も大きいので該当する場合は忘れずに記入しましょう。
基本的には、これも控除証明書に記載されている通りに記入しますが、今回は控除証明書が発行されないものもあるので注意が必要です。
順に説明していきます。
4-1. 年末調整で記入する社会保険料控除の種類
年末調整で記入する社会保険料控除の種類は以下の4種類です。
- 自分や家族の国民年金保険料
- 自分や家族の国民健康保険料
- 国民年金基金の掛金
- 後期高齢者医療制度の保険料、介護保険法の規定による介護保険料
会社で天引きされている社会保険料(厚生年金、健康保険)については、会社が把握しているのでここに記入する必要はありません。
また、前職で支払っている社会保険料については、前職で発行される源泉徴収票で確認できるので、今の職場に提出しましょう。
4-2. 自分や家族の国民年金保険料
以下の場合には、自分や家族の国民年金保険料を記入することが出来ます。
- もともと今の職場に社会保険がなく、自分で国民年金に加入している
- 年度途中に中途採用され、入社前に国民年金に加入していた
- 妻や20歳以上の子供の国民年金を自分が支払っている
- 滞納分の国民年金を追納した
上記のような場合には、日本年金機構から控除証明書が送られてきますので、その金額を記入します。
4-3. 自分や家族の国民健康保険料
職場に健康保険がなく、自分で国民健康保険に加入している場合、もしくは家族の健康保険料を支払っている場合は、社会保険料控除に記入します。
ただし、国民健康保険には、控除証明書がありません(自治体によっては発行している場合もあります)。
ですので、控除証明書の添付は必要なく、金額を記入するだけで大丈夫です。
国民健康保険料を記入する場合には、1月1日から12月31日までに実際に納付した保険料を自分で確認する必要があります。
具体的には、現金払いなら納付済書、銀行引落なら通帳、わからなくなってしまった場合には、市区町村に電話で問い合わせることもできます。
実際に納付した金額を記入するので、例えば納付期限が来年のものでも、今年にすべて支払っていれば今年の控除になります。
4-4. 国民年金基金の掛金
国民年金基金とは、国が運用している年金で、国民年金に上乗せで付加できる年金です。
国民年金基金の掛金も、全額が社会保険料控除の対象となります。
控除証明書が送られてくるので、その金額を記入します。
4-5. 後期高齢者医療制度の保険料、介護保険法の規定による介護保険料
後期高齢者医療制度の保険料や、介護保険法の規定による介護保険料を、年金からの天引きや、口座振替で支払っている場合に、金額を記入できます。
本人と生計を一にする親族が負担すべき社会保険料を支払った場合も、本人の社会保険料控除の対象にすることができます。
5. 小規模企業共済掛金控除の書き方と注意点
小規模企業共済掛金控除には以下の3つがあります。
・独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金
いわゆる小規模企業共済のことです。
20人以下の会社の役員や、個人事業主が加入できる共済制度のことで、会社勤めのサラリーマンが年末調整で記入できるのは、以前に個人事業主として小規模企業共済に加入していたことがあり、現在も続けている場合になります。控除証明書が送られてくるのでそれを元に記入します。
・確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金
基本的には、企業型は給与天引きなので、控除証明書の添付も記入も必要ありません。
ただし、企業型を個人で支払っていて、控除証明書が手元にある場合は記入します。
・確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金
個人型=iDeCo(イデコ)のことで、私的年金の一つです。
資金を運用したものを老後の受給額として支払われます。
個人型は控除証明書が送られてくるのでそれを元に記入します。
・心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金
地方公共団体が運用する制度で、心身障害者を扶養する保護者に万一のこと(死亡や重度障害など)があった場合に、扶養している心身障害者に終身一定額の年金を支給する制度です。
控除証明書が送られてくるのでそれを元に記入します。
最後に
いかがでしたでしょうか。
年末調整の保険料控除はサラリーマンの数少ない節税対策ですから、間違いなく記入したいですね。